戦後初の『封神演義』の邦訳本(抄訳)。現在は絶版になっています。
木嶋清道/訳 謙光社 3,500円 1977年刊
前書きで訳者が書いている通り、本書は中国古典小説『封神演義』の翻訳ではありません。細部のエピソードから人物の性格・物語の枠組みに至るまで訳者の好みに沿って書き換えられており、もはや中国の封神演義とは別物の現代小説になっています。エンタテインメントとしては文句なしに楽しめる小説ですが、原典とは異なる「安能設定」が多いと言うことも理解した上で読むべき本だと言えるでしょう。
(上) 安能務/訳 講談社文庫 714円 1988/11刊 出版社のサイト
(中) 安能務/訳 講談社文庫 733円 1988/12刊 出版社のサイト
(下) 安能務/訳 講談社文庫 733円 1989/1刊 出版社のサイト
実は国内唯一の『封神演義』の完訳本。一部の詩が訳されていない、誤訳があるなどの問題点はあるものの、いち早く原典の完訳を提供したことは、高く評価されてしかるべきだと思います。ただ、単価が高い・分厚い・読み辛いなどのデメリットもあるので、取っつきは悪いかも知れません。原典の大まかな流れを知った上で細部を調べるために読む、中・上級者向けの一冊でしょう。
許仲琳/編 コーエー 各2,136円 1995/1〜1995/3刊
『完訳 封神演義』を元に文章を削ったり書き換えたりして、取っつきやすくアレンジしたもの。そのため「完訳」ではなくなりましたが、たしかに読みやすくなっています。ただ面白い翻案なら安能版がありますし、完訳なら『完訳 封神演義』があるわけで、本書の位置づけってちょっと中途半端のような気も。巻末の人物索引は簡易的な事典も兼ねていて、なかなか使えます。
許仲琳/編 コーエー 歴史ポケットシリーズ 各600円 1998/3刊〜1998/8刊
エピソードごとに読み切りになっていて、サクッと読める抄訳版。しかしオリジナルのエピソードがふんだんに入っている上に、人物の性格も妲己を中心にかなり脚色されています。それ自体は悪いことだとは思わないのですが、この内容の本を「中国原典抄訳版」として売り出すのは、正直いかがなものでしょうか。タイトルがこんなのじゃなければ、良い本だと思うんですけどね…。
陸西星/撰 河合章子/訳 講談社+α文庫 940円 1998/10刊 出版社のサイト
児童向けの『封神演義』の編訳。主要人物からマイナーキャラまで豊富に挿し絵が入っていて、ビジュアルイメージを掴みやすくなっています。またルビがキチンと振ってあったり、脚注が上部にあってページをめくる手間が不要など、読者に優しい仕様になっているのも評価出来ます。値段が高めなのが難点ですが、他の訳本で挫折した方にはもってこいの一冊だと思います。
(上) 許仲琳/編 渡辺仙州/編訳 偕成社 1,600円 1998/11刊 出版社のサイト
(中) 許仲琳/編 渡辺仙州/編訳 偕成社 1,600円 1998/11刊 出版社のサイト
(下) 許仲琳/編 渡辺仙州/編訳 偕成社 1,600円 1998/12刊 出版社のサイト
『封神演義』の抄訳。意外に細かいエピソードなども入っていたりして、かなり原典に忠実に訳されています。安能版は「安能封神演義」ですし、コーエー版は高くて読み辛くて誤訳ありと考えると、本書は現状最も秀逸な邦訳と言えるかも知れません。分かりにくい用語を文中で解説しているのも良いですし、文章自体平易で読みやすい。『封神演義の世界』の著者・二階堂善弘氏の解説も付いています。
八木原一恵/編訳 集英社文庫 914円 1999/3刊 出版社のサイト
中国河南省の文化局長、日中友好団体の関係者、放射線医学の研究者(笑)などが、「正しい『封神演義』を日本に伝えよう!」と集まって作った『封神演義』の抄訳+解説書。文章は中文和訳なのにすらすらと読めますし、解説も要点を過不足なく伝えています。一定の内容といえるでしょう。しかし漢字が一部簡体字のままだったり、ルビが間違っていたりと、単純ミスが多すぎるのは残念です。
周金岑/改篇 倉橋敦司/訳 文芸社 1,400円 1999/5刊 出版社のサイト
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