ワイドビューしなの15号殺人事件
第1話 快速の中で
8月 朝から暑いこの日
がらがらの朝霧駅ホームに、1人の男が立っていた。
峰崎弘樹(みねざきひろき) 38歳
兵庫県垂水警察署のベテラン警部だ。
この日は、休暇をとって、長野は軽井沢の別荘へ、旅行へ行くのだった。
「ここから普通で舞子に行って、快速で大阪へ行って、そこから『しなの15号』に
乗って篠ノ井で降りて、そこからしなの鉄道で軽井沢か」
鈍行好きの峰崎は、新幹線はあまり好きではない。
鈍行なら、どんなに時間がかかってもいい、そんなやつである。
そうこうしているうちに、朝霧駅のホームに普通列車が滑り込んだ。
垂水まで行くと、峰崎は列車を降り、快速に乗り換えた。
快速米原行き6時52分発の列車である。
6時51分、快速223系がホームに滑り込んできた。
この快速は、途中、須磨、兵庫、神戸、元町、三ノ宮、六甲道、住吉、芦屋、西ノ宮、尼崎と停まり、大阪へ行く。
峰崎はこれに乗りこみ、大阪へと向かった。
それから、何分たっただろう。甲南山手を通過したとき、峰崎はある男が目に入った。
西崎巧(にしざきたくみ)
4年前、垂水で起きたOL殺人事件で、半年の捜査の結果、峰崎が逮捕した男である。
判決で1年5ヶ月の懲役を受け、去年、出所したばかりである。その男が、峰崎と同じ
快速の車内にいた。
峰崎は、違和感を感じた。もしかしたら、西崎は、俺に復讐をしてくるのでは・・・と。
そう思っていると、「次は大阪〜、大阪〜」というアナウンスがかかった。
峰崎は、あわてて降りた。
ここから、恐怖の遊戯(ゲーム)が始まった・・・。