―――――トントン・・・―――
ドアを叩く音が聞こえる・・・
「柳娟、入るわよ。」
柳娟の母が柳娟達の部屋のドアを開けた。
「何?母様。」
ひょいと、柳娟が目を反らしてみると、母の後ろには康琳がいた。
それも、わくわくした様子で・・・
「明日は・・たしか柳娟の誕生日よね。九歳の。それで、プレゼントとして、
康琳と、明日何処に行きたいか決めてほしいのよ。決める権利は、勿論、誕生日を迎える
柳娟にあるけど、康琳にもちゃんと意見言わせるのよ。いいわね?」
「うん」と、柳娟がうなずくと、母は、安心そうにして部屋を去っていった。
「康琳は、何処行きたいんだ?」
きょとんと、座った康琳は、ニッと笑った。
「私も行きたいトコあるけど、兄様が決めていいよ。権利は兄様に
あるんだし。私がちゃあんと決めるときはきっと、私の誕生日よ。」
柳娟が目を丸くすると、康琳の肩に、ポンッと、手を置いた。
「いーや。康琳だって行くんだから、康琳も決めてくれなくちゃっ。
考えるのが面倒くさい、とかはいわせないぞー」
柳娟が、笑いながら康琳にいった。
「め・・面倒くさいなんて思ってないもん!!分かったよ。私もちょびっと
考える。でも、兄様もちゃんと考えてよね!」
柳娟に指を指した康琳は、いきなり、アハハ・・と、笑いだした。
「
こ・・康琳?!何いきなり笑ってンだよっ」
「ううん。別に。じゃ。考えようか・・・」
そして、二人が話し合って、一時間。もうすぐ、朝の九時を迎えようとしていた。
「・・・あ・・・・!」
何か思いだしたように、康琳は、柳娟の顔をみた。
「何?どうしたんだ?」
「ほ。」
「ほ??」
「ほ・・・・・」
「ほ?!」
「鳳恵・・・・山・・・」
「へ?鳳恵山?」
康琳は床下を見た。
柳娟が謎めいた顔をして、康琳の顔を近づけた。
「明日・・・鳳・・恵山・・行くんじゃなかった・・っけ・・?」
康琳が上目で柳娟の顔を見上げる。
「あ・・。あぁー――!!そういえばっ!」
急に柳娟は頭を抱えた。だが、スッ、と立ち直り、ハッとした顔で、
康琳を見た。
「・・・明日・・僕の誕生日・・連れてってもらえば・・いいんじゃないかな・・?」
「あ・・・。」
康琳は、「そういえばそうだ。」という顔をして、ぽかんとした。
ドタドタドタ――
柳娟達が廊下を走っていると、店から、御客の声がしてきた。
「母様っ!母様っ!僕達、明日鳳恵山行きたいっ!!」
「こら。柳娟。御店に丸聞こえでしょ!静かにしなさいな。」
そういいながら、母は、窓の外からうっすら見える、鳳恵山に目をやった。
「今・・あそこは・・誕生日に行くような時期じゃないのよ・・。ほら・・。今日は、妖怪たちが
騒ぎだす日でしょう。明日は、きっと、蛇や、虎・・もしかしたら人間・・それ以外だって・・
死骸がある場合があるのよ・・。呂侯や康琳が泣いたらどうする気・・?」
すると、偶然通りかかった父親が言い出した。
「いや。人間の死骸もあるかもしれないぞ。鳳恵山に住んでいる人たちだっているからな。
昔は、誰も住んでなくて、山賊だけだったからな。」
「え・・?!山賊!?鳳恵山って山賊いるの?!」
柳娟がわくわくした様子で言い出すと、
「いや。今はいないらしいが・・もしかしたらな。あそこの山賊は昔、
隣の倶東国に滅ぼされたらしいんだが。」
「母様〜。御客様がーっ。」
店を手伝っていた、呂侯がやや大きめの声で、母を呼んだ。
「あっ。いっけなあ〜い!御店の方やんなくちゃっ!父様!二人の相手してて。」
「母様。がんばってね!」
康琳は、にこにこ笑って店に戻る母に笑顔を向けた。
「おぉっと!俺も仕事があったっけ!柳娟達も店手伝えよ〜!」
そういって、父は去っていった。
「・・・・・今日・・・」
柳娟は、また、ポツリと呟いた。
すると、康琳は、ハッとして、兄を見た。
「兄様・・まさか、今日・・行こう・・なあんて言うんぢゃ・・!!」
柳娟はフッと、笑った。