柳娟は、ポツンと康琳の近くで声をかける。
「康琳・・袋にちゃんと荷物を入れるんだぞ。」
「う・・うん!!」
二人は何やらせっせと、袋にいろいろとつめこんでいた。
何故なら・・。そう。二人は朝、鳳恵山に行くということを約束していたのだ。
「ねえ・・兄様・・。ホンットーに、父様や母様に言わなくていいの・・?」
康琳は、悩ましげな顔を、柳娟に向けた。
「あぁ。決心はつけた。それに・・父様や母様に言ったらますます行けなくなるだろう?」
「・・・・・・・・・・・・」
柳娟が、どれほど説得させたって、康琳はナットクのいく表情を出さなかった。
ただそのまま・・・・悩ましげに―――――
そんな時、柳娟が、康琳の肩にやさしく手を乗っけ、こう、康琳に告げた。
「・・・・いいか。康琳・・。たしかに・・僕はわがままかもしれないけど・・
僕は、あの山に行ってみたい・・いや、行きたいんだ!!それとも・・母様達の
事だけじゃなく、康琳はあの山に行きたくないの・・?」
「・・・・・・・・・・・・・」
それでも、康琳は、黙りっぱなし。しばらくの沈黙が二人の間に流れた。
「・・・でも、康琳が、行きたくなくとも、僕は行く!例え一人だって・・!!」
「・・・・・・・ヤダ・・・・よ・・・」
その、康琳の一言を柳娟は、しかと耳にし、フゥ・・とため息をついた。
「じゃあ・・・行って来る・・。僕の心配はしなくていいから・・。」
スッと、立ち上がった柳娟の腕を、康琳は、ギュッと腕いっぱいに掴んだ。
「やだ・・やだ・・・やだ!!!兄様と一緒に行きたい!!私も・・・山へ行く!!」
「・・!! こ・・うり・・・・ん・・。本当に行っても・・ヘイキ・・なのか・・?」
康琳は、ふっ・・と、誰も刺激されそうな、愛らしい笑顔を柳娟に見せた。
「ヘイキ!行くよ。兄様!袋に詰めるの手伝って!」
さっきまでの、沈黙が、嘘のように、ふたりはせっせと、荷物を袋に入れた。
 
 
 
「そ〜っとだぞ。康琳。」
「分かってるよ。兄様☆
―――――ギイィィィィィィィィ―――・・・
家を閉ざしている、二人の家の裏口から柳娟達は、そーっと、家から
外に出た。
二人は、あっという間に、隣町に来てしまった。
「隣町まで、そんなにかからなかったね。」
康琳が、微笑みながら言う。
「そうだな・・・・あ・・!!」
目の前を、よく見ると、二人の目の前にハッキリと、鳳恵山が見えた。
「鳳恵山だ・・あんなにハッキリ・・・ほんの少し歩いただけなのにね・・。」
康琳は、謎めいた顔をしながら言った。
「でも・・・なんだか、近づいた感じがしていいじゃないか・・。」
「そうだね。」
二人は、笑い合いながら、また、足を鳳恵山へと進めた。
二人が足を進めているうちに、いつしか鳳恵山が近くに見えてきた。
もう・・鳳恵山に着くまで、僕等の視界から山が離れる事はないだろう―――・・
そう思いながら、二人は真剣な目で鳳恵山に向かった。
 
 
 
 
――――どれくらい歩いたのだろう・・
山のある町は・・この町の隣なのに―――
柳娟達が、いま踏んでいる町の土に、二人の汗が染み込んだ。
そして、空は綺麗な夕焼・・・
――――――ウオオォォォォォォォ・・・・
ハッと、康琳が山に目をやった。
(・・・・まさか・・・妖・・・怪・・・?!)
康琳は、汗を、びっしょりと、かいていた。
「どうした・・?康琳。」
康琳の異変に、柳娟が気がついた。

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