第一章    朱き真実
 
―たっ・・たっ・・たっ・・たっ・・
風に誘われて、サワサワと鳴る林の葉の擦れあう音に混じって、
誰かが、足で土を蹴りながら走ってくる音が聞こえた。
「はぁ・・はぁ・・やぁ〜っと見つけたよっ!兄様っ!」
泉のほとりに走ってきた少女が、ほとりにしゃがむ少年に声をかけた。
「あれ?康琳?どうしたんだ。息を切らして・・・!」
少年はスッと少女の方に振り返り、少女に問いかけた。
「あのね。母様が『御朝食出来たわよ。』って言ってたから、伝えに来たの。
兄様に伝えようとして、部屋に行ったら兄様ったら部屋にいないんだもんっ!」
少女は、ムッスリとして頬を膨らませた。
「ははは・・。ごめんな。康琳。今行くよ。」
少年は少女に向かってクスクスと笑った。
「ねー、兄様ー。一緒に帰ろーよー。」
「よしっ。じゃぁ帰ろっか!」
二人は手をつないだ。まだ幼い少年と少女。十ぐらいだろうか・・?
二人は、顔・身体・形・・なにからなにまでそっくりだった。
兄様と呼ばれる少年は 迢 柳娟。
そして、康琳と呼ばれるこの少女の名は 迢 康琳という。
康琳は、柳娟の妹で兄の柳娟が大好きだ。
二人は、名字から分かるように兄妹である。ふたりはとっても仲が良かった。
そして泉のほとりの草のしげみには、幼き二人の歩く後ろ姿があった。
 
 
―ガラッ 
柳娟たちは、ある家の玄関の扉を開いた。
扉の上には、大きく「 迢 」 と、書かれ、その下には、
織物屋らしき名が書かれていた。
「ただいま。母様。父様。」
「ただいま。」
柳娟が言った後、康琳も続けていった。
そして、返ってきた言葉は、二人の母からの、「おかえりーっ」という声だった。
「うわぁっ。美味しそう♪」
康琳が愛らしい顔でいった。
「ほら。柳娟、康琳、呂侯!父様もっ!早く座なさいっ!」
母がいった。ちなみに呂侯というのは、柳娟と康琳の兄だ。
―カタン・・・
皆が椅子に座り込んだ。
「いただきまぁすっ!」
皆は声を合わせいった。そして、いった後、みんな箸を持って、台の上に置かれた
料理に手を出していた。
「・・・やっぱり飯は美味いな・・なっ!呂侯!」
父が呂侯に向かっていった。
「うん。美味しいね。父様。」
呂侯はニコッと笑って父の顔を見た。
「ねー。母様ー父様ー。あそこに見える山って薬草とかってあるの・・?」
すると、柳娟は、窓から仄かにうっすら見える高き山を指指した


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