9月16日(火) 小樽市忍路〜岩内町(雷電野営場)

余市市内を走行中、自転車に乗った青年が話しかけてきた。
彼は九州から来ていて、今夜岩内をでるフェリーにのって帰るという。
わしの目的地も岩内なので、一緒に走ろうということになった。
今日は昨日とうって変わって風もなく、天気もいい。
交通量は少ないし、道路の両側には北海道らしい広々とした風景が広がっている。
ああ、やっと北海道らしい雰囲気になってきたなあ、などと話をしながら気持ち良く走
った。
260mぐらいの峠もなんとか越え、岩内の町が近づいてきたころ不幸が始まった。
青年が乗るはずだったフェリーが台風のため欠航になり、2日後まで船がないという。
青年はとたんにあわてはじめた。

彼は大学で機械を学んでおり、宿題でロボットを作らなければならないという。
予定通り帰っていれば3日程度の時間があり、なんとか完成できそうだったが、
2日後の船ではとうてい間に合わない。しかし、諸事情でその宿題は絶対にやらなけれ
ばならない。
さて、どうしたものかと2人で考えた。
鉄道を使う方法、他のフェリーを使う方法などを考えたが、結局彼は飛行機を使う方法
を選んだ。
とりあえず、わしが宿泊する予定していた岩内町雷電野営場まで一緒に行き、そこから
彼はわしの携帯電話を使ってあちこちに電話をかけて、飛行機の予約などをすませた。
自転車は、岩内から宅急便で送ることにした。
すべての算段を終えたときにはあたりは真っ暗になっていた。
彼はようやく落ち着きをとりもどし、二人でラーメンを作って食べ、わしのせまいせま
いテントに2人並んで寝た。
テントの中でいろいろな話をしたが、彼が
「奥さんはどんな人ですか」
とか、
「奥さんとはどこで知り合ったのですか」
などと聞いてくるのがなんとなくおかしかった。
そんなことはもう何年も口にしたことがなかったので、少々照れ臭かった。
夜中にかなり風が強くなりテントがばたばたと音をたてた。
わしは不安でしばらく起きていたが、彼はあまり気にならないようですぐに眠ってしま
った。
風の音を聞きながら、今日は妙な一日だったなあと思った。

本日の走行距離 60.05km
宿泊地 岩内町雷電野営場