「The End Of Log」


12月9日(火) 鹿児島県志布志町〜大阪南港〜京都府八幡市 晴れ

朝フェリーの中で目覚めて一番に風呂に入りにいった。
風呂場にはだれもおらず、一人で大きな湯船につかって、海を眺めながら、
ああ、旅ももう終わりだなあ、と思った。
いつものことだが、旅の終わりというのは寂しいものだ。
今回のような長い旅の場合はなおさらだ。
しかし、よくこんなところまで走ってきたなあ。
8月に自転車を買って、9月に日本縦断に出発。
約3500kmを80日間で走ってきた。
毎日いろいろなことがあったが、それほど意外なできごともなかった。
概ね静かな旅であった。
美しい景色もあったが、ほとんどは道路沿いの退屈な風景をずっと眺めていたよう
に思う。
どうして日本はどこに行っても同じ風景ばかりなんだろう、と少し恨めしく思うこ
ともあった。
それでも、この3ヶ月間ほとんど休むことなく自転車をこいできたのはいったいな
ぜなのだろう。
いったい何が自分の推進力になったのだろう。
一つは、風景や人との出会いだろう。
さっき書いたように、概ねは単調な道中であったが、時折出会うすばらしい風景や
楽しい人々への期待が、
あそこまで行ってみよう、あの坂道を越えてみよう、という力の源になったような
気がする。
そして、もう一つ。
それは、今の今になって気がついたことだが、
自転車をこぐことはひょっとして楽しいのではないだろうか。
怠け者の私が、毎朝まめに荷物を自転車にくくりつけ、陽の低いうちに次の目的地
を目指していたのは、
自転車をこぐことそれ自体のおもしろさがあったからではないだろうか。
サドルの上で、流れていく景色を眺めながら、歌をうたったり、つまらないことを
考えたりすることが。
もともと私は、歩きながら考え事をする習性があるのだが、その生理が自転車とい
うのりものにフィットしたのかもしれない。
とすると、次の旅も(いつのことになるかわからないが)私は自転車を選ぶのだろ
うか。
いや、それはわからない。
私は別に自転車へのこだわりでこの旅を始めたわけではない。
たまたま日本を旅行するための道具がこれしかなかったからだ。
次の機会には、そのときの行き先や目的にあった方法を考えることだろう。
ただそのとき、自転車がその候補の上位に位置することは間違いないだろう。
しかし、いったい次の旅はいつのことになるのだろう。
5年後か、10年後か、はたまたこれが最後か・・・
すでに次の目標は自分の心の中にある。
ただ、その前にはしなければならないことがたくさんある。
それは、決して自分にとって心地のいいものではないかもしれないが、
ひょっとするとそれもこれから始まる旅の一部分なのかもしれない、
と今はそんな風に思える。

本日の走行距離 58.28km
本日の宿泊地 自宅