「ヨーダとの出会い」


12月9日(火) 鹿児島県根占町〜鹿児島県志布志町 晴れ

いよいよ今日で九州ともお別れである。
夜9時発の、志布志発大阪行きフェリーの切符を取ってあるのだ。

朝、8時半頃に錦江湾YHを出発。
遠くに桜島をみながら錦江湾沿いを北に向かって走る。
快晴だ。
しかし、寒い。
本格的に冬がやってきたようだ。
やはり早く京都に帰らなければ・・・・
しかし、旅も最後となると名残惜しく、ついつい自転車をこぐ速度も遅くなる。
できるだけ、たくさんの景色を見ておこう、できるだけたくさんの空気を吸ってお
こう、そんな気持ちになる。
錦江湾に面するある街で自転車を降りて写真を撮っていると、
片方の目が不自由な老人がこちらに近づいてきた。
老人は私の前で立ち止まりこう言った。
「今日で終わりか?」
え?
困惑する私の表情を読みとったのか、老人はもう一度言った。
「今日で終わりか?」
わたしは驚いた。
なぜ、この老人は私の旅がもうすぐ終わることを知っているのだ。
今日終わるのではないが、明日には私の旅は終わる。
私の顔のどこかに、旅の終わりを匂わせる何かがあるというのか。
「仙人」
という言葉が頭に浮かんだ。
私がこの旅を始めたのも、そしてこの場所にやってきたのも実はこの老人、つまり
仙人の意志であったのか・・・・
と、混乱しながら考えていると、老人は右腕をゆっくりと上げ、私の背後にある何
かを指さした。
私は、その指の差す方向に目をやった。
工事現場だ。
そう、道路工事が行われていて、道路がふさがれていたのだ。
その工事が今日終わるのか、と老人は聞いてきたのだ。
つまり、老人は私を工事現場の作業員と間違えたのだ。
確かに私はジャージをはいていて、そのように見えないこともないが・・・
思わぬ勘違いに苦笑ながら、
「いや、僕は旅をしているもので、工事とは関係ないんですけど」
と言うと、
「ふーん」
とひとこと言うと、どこかへ行ってしまった。

本日の走行距離 59.23km
本日の宿泊地 志布志発大阪行きフェリー2等船室