方便品第二(一)

仏の知恵は     限りなし    無数の仏に     会いまつり

長き修行を     経し後に    漸く得てし     宝なり

汝の知恵の     賢(さか)しさを  ガンジス河の    砂ほどに

集めたりとも    及ぶまじ    はたまた無慮の   菩薩とて

思い果(は)つべき  知恵ならず   ただ汝等の     根に燃ゆる

道を求むる     心こそ     仏の知恵の     すべてをば

まことのままに   受くるなり   汝なんじに     心せよ

ただ素直なる    心こそ     道を求むる     心なれ

われ数々の     てだてもて   人各々の      悩みをば

人各々の      性により    人各々に      合う如く

説き来説き去り   説き明かし   無数の教(のり)と   なりしなり

方便(てだて)なければ 汝等を     救うすべとて    無かるらん

この故にこそ    我は言う    方便の宗(むね)を   称えかし

  

方便品第二(二)

わが舎利弗よ    よく聞けよ   仏の道は      一つなり

十方世界      広けれど    仏の道は      一つなり

されど汝等     徳薄く     智慧のさばきの   幼けば

われ方便の     道を仮り    種々(くさぐさ)の道  説きしなり

方便なければ    汝等を     導くすべは     無かるべく

方便こそは     汝等を     実(まこと)の道に   入るるなり

されば十方     一切の     仏の法は      同じなり

心に深く      真実の     仏の道を      隠しつつ

衆生の性に     応じては    まづ方便を     説き出し

三つの道と     恵むなり    されど今こそ    時なりと

三つの道を     打ち払い    心に秘めし     本来の

一つの道を     明かすなり   一つの道は     何事ぞ

みんな等しく    みほとけの   缺(か)けなき性を  内に持つ

この有難き     仏性を     開き示して     悟らしめ

こよなき幸に    入る々なり   さては汝等     心せよ

たとえ子供の    遊びもて    仏のすがた     描きても

たとえ乱るる    心もて     一たび南無と    唱えても

方便の道      尊けば     如何なる軽ろき   善にても

若し仏道に     回向せば    そのまま仏の    道なれや

ああ舎利弗よ    我は今     心豊かに      思うなり

昔の誓い      人皆に     われと等しき    この幸を

授け果てんと    願いしが    今日こそは     その日なり

歓べぞかし     舎利弗よ    わが誓願は     成就せり

唯仏与仏 乃能究尽 諸法実相 所謂諸法 如是相 如是性 如是体

如是力 如是作 如是因 如是縁 如是果 如是報 如是本末究竟等