作者プロフィール

小橋かおる

兵庫県生れ。
神戸大学大学院教育学研究科修了。
現在、神戸大学など3大学で英語を教える。
16才の時、兵庫県主催の国際交流プログラムに参加し初めて渡米。以来国際事情に強い関心を持つ。
1998年「海市短歌会」入会。作歌活動開始。著書に『英語科授業学における今日的課題』(1997年、金星堂、共著)、合同歌集『メビウスの帯』(2003年、北羊館)などがある。


本書によせて

 20世紀は戦争の世紀と呼ばれ、2度の世界大戦、ベトナム戦争、独裁者による大量虐殺と、限りない暴力にあふれていました。けれども経済的に繁栄した平和な国に生まれ育ったわたしのような人間には、どこか遠くの世界の暴力でしかありませんでした。

 21世紀になって、計り知れない暴力がわたしたちの日常に入り込んできました。ニューヨーク、バリ島、イスタンブール、人々を突如として襲う無差別テロ。アフガン、イラクに無数に降り注ぐミサイル。巻き込まれる罪のない人々。それらは決してどこか遠いところの話ではなく、わたしたちに直接襲いかかる暴力であり、またわたしたちの安全と自由を守るという名目のもとにおこなわれる暴力なのです。

 本書は終わりのないように見える暴力の連鎖の中で、それでも暴力のない世界への希望を失いたくないという気持ちから沸き上がってきた言葉を編んだものです。短歌や詩の形で表れた言葉は、同じ思いの英語の詩とシンプルな絵とともに本書に収められています。

 この本を手にとられたあなたにお願いがあります。ご覧のとおり、この本には空白がたくさんあります。わたしにできるのはここまででした。ですから、この空白はあなたが埋めてください。もしもあなたがアラビア語や中国語、あるいは他の言葉も話すのなら、その言葉に書き直して、その言葉がわかる人に読んであげてください。もしもあなたが絵が好きなら、あなたの絵を描き足して、友達に見せてあげてください。それとも色を塗ってください。わたしひとりではできないことが、あなたが一緒ならできるから。あなたとわたしだけではできないことも、他の誰かが一緒ならできるから。そうして、ここに収められた希望への言葉を、湖面に投げ込まれた石が描く静かな波紋のように、ずっとずっと広げていきましょう。
 暴力の連鎖を希望の連鎖に変えるために、あなたの力を分けてください。


2004年3月  小橋 かおる