好プレー その1

親愛なるものへ

94年イタリアGPにて


 94年イタリアGP決勝、午後2時30分、ティフォシたちの歓声がひときわ大きくなった、午前中のウォームアップで激しいクラッシュをし出場が危ぶまれていたフェラーリのゲルハルトベルガーが駆るフェラーリ412T1bがPITからコースに姿を現した。

 時を同じくして28番のプラカードを持った少女はひどく緊張していた、グランドスタンドはフェラーリを応援する人々で一杯、赤い旗やTシャツそこら中が赤い、サーキットの華であるグリッドガールの後方ではゲストとして呼ばれた映画俳優のシルベスタスタローンがプレスからフラッシュを浴び続けられている、しかし彼女は他のグリッドガールと違いその映画俳優には目もくれない、まるで親愛なるものを待ち続けるようだ。

 彼女の後方にベルガーのフェラーリが止まった、マシンから降りたベルガーはプレスのインタビューが矢継ぎ早に始まり、ベルガーがグランドスタンドに向かって手を降ると、スタンドは大きな波が起きる、彼女はそんな歓声に鳥肌がたった、そんな彼女には気もとめず、朝のクラッシュで痛めた首を隠し陽気に振る舞うベルガー、シルベスタスタローンと一言二言社交辞令の挨拶を交わす、むしろ普段あこがれの視線を投げ続けられている映画俳優のスタローンがベルガーに対して熱い視線を投げかける、それほどここイタリアGPのフェラーリドライバーというものは特別な存在なのだ。

 たまらず関係者がプレスを押しのけベルガーに近づいて耳打ちをした
「ゲルハルト!おまえの名前のプラカードを持っているのは最愛の娘クリスティーナだぞ」
その声に反応したベルガーは彼女のほうへ振り返った、一瞬クリスティーナの顔がこわばる、そんな最愛の娘を見てベルガーが今まで厳しい表情から一気に優しく微笑んだ、そして軽く彼女を抱き寄せてキス、そして何も声もかけずマシンに乗り込んだ。

そしてクリスティーナ14才の秋、イタリアGP終了後に父が表彰台に立つ姿を見る。

かなり以前に友人から見せてもらった雑誌のコラムをみてひどく感動したお話です、その後ここへ書いてはみたもののどのGPか覚えていないは、何年の話やらとチンプンカンプンでたくさんのみなさまからこの件についてメールを頂きダブルで感動を頂きました、ベルガーも悪戯ばかりでなくこういう好プレーはたくさんあるのです。

参考著書 AS+F 94年イタリアGP号

たくさんのみなさんからこの記事に対して情報を頂きました、ありがとうございます。
順不同 しょう2さん 中村さん ゲベさん さがらみちるさん konishiさん YUNさん 無記名の投稿を頂いたたくさんのみなさん。