少女には友達がいなかった。
 家族以外に名前を知っている人がいなかった。

 でも、寂しいなんて思ったことはなかった。
 大好きな両親と妹がいつも一緒だったから。

 今日いる町に明日はもういない。そんなことが日常だった。
 同じ町に七日はいない。ほとんど身一つで移動を繰り返す日々だった。

 だけど、そんな毎日に疑問を持ったこともなかった。
 生まれた時からずっとそうしてきてたから。

 不幸だなんて思ったことは一度もなかった。
 今日とは違う明日が来るなんて夢にも思っていなかった。

 そう、この日までは。


 晴れ渡った空の青と、それに映える鮮やかな草原の緑がまぶしかった。
 妹が下で笑ってる。妹は飛ぶのがうまかった。
 父の与えた課題をもう終えている。

 少女は魔法は得意じゃなかった。それよりは本を読む方が好きだった。
 よく体を壊して寝込んでいた妹に読んで聞かせたこともあった。
 でも、今日はこれができたら母が作ってくれた
 新しい覆被布ヴェンナをつけて街まで買い物に行く。

 もう一度ふわりと宙を舞うと、家のそばで父が手を振っていた。


 草原の中の小さな木の家。ほんの数日だけど今はここが家族の家。
 母と手をつないで歩いた街までの道のり。
 丘の上から見える街の景色が好きだった。


 だけど、そこに奴らは現れた。
 草原の中に見える黒い影。
 母は恐れ肩を震わせた。そして後ろを向いた。
 後ろからも黒い影。
 母は少女の肩をぎゅっと抱いた。光の輪がくるりと二人のまわりを囲んだ。

 二人の体は次の瞬間にはもう家にあった。


 床が真っ赤に染まってた。妹が泣き叫んでる。
 父がたくさん血を流して倒れていた。
 母は父の名を叫んだ。返事は返ってこない。

 真っ白な髪の老婆がいる。真っ黒な服を着た男たちを連れている。
 妹は彼らに捕らえられていた。銃口が母娘に向けられた。
 母は少女をかばった。母の胸から血が飛んだ。

 その手から最後に放たれた光。光は少女を覆った。
 少女の瞳に映る母の姿が薄れた。
 母のロが弱々しく動いた。少女の名を呼んだ。そして言った。

 ――――生きて――――


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