これはある会社で働いていた時の話…。
その会社は三階建ての比較的小さい建物で、すぐそばにアパートが立っているため、
非常に複雑でせまく、緩やかな斜面にある建物でした。
深夜まで仕事が続く職種だった為、良く隣のアパートから明りで苦情がきてました。
仮眠室が用意されていたので、社員が深夜まで仕事をしていたのです。
働き始めて半年ほどした時に、その会社の仮眠室に という、噂を聞き、
それまでに何度も泊まっていた私は、本当だろうか?と最初は疑いました。
それは場所がある程度決まっている様で、3段ベッドが3つある全9人寝られる内の、
手前にあるベッドのまん中と一番上に多く体験者がいる様でした。
実際、話を聞く前に私も何度かそこで寝ていましたが、いくら寝ても疲れが取れずに
いたので、家で寝ないとダメかな?と思っていた事もあり、100%ウソでも無さそ
うな気もしてきたのです。
体験者の話では寝ていると女の人が出てくるらしく、上から髪の毛がさわさわと降り
てくるそうです。また、犬か何かが布団の上を動き回るという人もいました。
私は運良いのか、結局それらは一度も体験しませんでした。
そんな話を聞いてすぐ、またも驚かされる事実を知る事になりました。
私が働き始める以前に、隣のアパートで自殺者が出ていたというのです。
しかも部屋の中では無く、窓の物干に首を吊っていたらしいのです。
そのアパートの部屋の窓に隣接した、会社の窓付きの部屋がいくつも有るのですが、
一番近く、真上から現場を見る事が出来る場所の一つが…仮眠室でした。
仕事がら写真を扱う事があるのでカメラが常にあり、個人で持っている人もいた為、
その現場の写真を撮った人もいたようです。
撮った本人はすぐ焼いてしまったようで、一度も目にする事はありませんでしたが、
噂では他に持っている人がいるらしいです。
・・・さて、これまでは私自身の体験は一切入ってませんでした。
が、…これから話す事はこれをふまえてからで無いと納得いかないし、又、ふまえた
としてもさっぱり分からないという体験です。
それは、入社から一年位を過ぎた春先、深夜のことでした。
時間は深夜の2時近く…私ともう一人、同じ班のAさんが居ました。
私達の班のある部屋は3階、階段で上がってすぐ左にトイレ、正面のドアを開けると
フロアに入れます。
Aさんは写真を撮る為に、同じフロアの一部の小部屋を暗室にして入っています。
私の席はフロアの中央にあるので、そこで仕事をしていました。
お互い疲れていたので何も声をかける事も無く、黙々と仕事をしていました。
仕事にも集中していたので、お互いのことは気にならなかったのです。
と、そこへちょっと勢い良くドアを開けて、誰かが入ってきました。
私は仕事に集中していたので振り向きもせず、たまに良くあったほかの班の人達が酔
っぱらって入って来たのだろう、と仕事を続けました。
その後、その人は迷う事なくフロアを一直線に奥まで歩いていったので、そこにある
備品などを取りに来たのだと考え、気にしないようにしようと思いました。
後から考えれば、何故そこまで感じとっていたのか? とても不思議です。しかし、
横を通り過ぎる時に目のハシに写ったその人の印象が、どうも引っ掛かったのです。
それから…そう…集中していたにもかかわらず、その人が気になってきたのです。
気になって当たり前だと思いますか? そんなはずは無いですよね。
私は気になる事が気になりだしました…。
おかしいおかしく無いはともかく、その時は気になって仕方がなかったんです。
どんどんと訳の分からない疑問が膨らんでいきました。
そして…しばらくして気がつきました。奥へ行った人が帰ってこないのです。
フロアは広くはありません、14〜15mくらいの奥行きです。
私の席は柱とロッカーが邪魔で奥が見えませんが、音くらいは聞こえます。
しかし物を動かす音や、足音さえも聞こえません、さっきまではあれほどハッキリ
存在を知ることが出来た相手がです。
どのくらい経ったのか、私は席を立ち、その存在を確かめようと確認できる所まで
歩いていき、そして見ました。
奥には…誰もいません。気配すらないのです。
その時、小部屋のドアが突然開き、Aさんが出てきました。
とっさに何をしているのかと訪ねられると思っていた私が、言い訳を考えていると
考えていた質問と違う問いが返ってきました。
そう…彼も小部屋に入っていたにも関わらず、ドアを開け、入って来た人物が気に
なっていたのでした。
不可解な現象を一人で経験したのなら、疲れているのか?と思うだけだったろう。
一人では無い…その嬉しさのあまり引きつった笑い顔をしていたと思います。
勘違いじゃ無かった…気のせいでも無かった!
私がAさんに事のあらましも、そこに立っていた理由も伝え終わると、まったく同
じ体験をした事が、ますますハッキリとしました。
彼も奥の方を見て…「こっちに来たでしょ?」と不思議そうに言っていたのです。
そこで、なんでその事がそんなに気になったのか?私が質問するとやはり、
「……いや、べつに…なんでだろ?」
と、内心を悟られない様に平静をよそおっていましたが、明らかに自覚していたの
だと思います、その存在が何なのかを。
しっかりとでは無いにしろ、その存在を目にした私は、それも彼に伝えました。
彼の反応があまり無いので、やはり信じられないのかと思いましたが、ほとんど
経験したことが同じだけに、それほど否定的でもありませんでした。
その後1人では無かったのと、それからは何も起きなかった為、そのままお互いの
仕事を続行させ、無事に終われた事が可笑しいくらい無神経である事が可笑しい、
人生で初めて目にした幽霊の話です。
|
|