目が覚めると既にそこにデュオの姿はなかった。
「ちっ…」
思わず舌打ちし、前髪をかきあげる。
いつもながらその気配の消し方は見事だ。
確かに自分が彼の気配に馴染んだ自覚はあるけれど、だからといって無警戒というわけでもないのに。
それどころか、張り詰めて伺ってさえいるのに、見事なまでにその場から消え失せる。
そうして、残される一輪の花。
まるで代わりだとでもいうように毎度毎度残されている花。種類も同じではなくて、サイズもまちまち。ただその時手に入ったからというように。
「次こそは…捕まえるからな」
『うーん、そうだな。もし一度でもお前がオレを捕まえられたら、そうしたら。
ここにずっといてやってもいい、かな』
約束は果たされるべきもので、誓いは神聖なもので。
まだそれが有効なのだという証明のように諦めるなと残される花。
多分望みは同じはずで、だけどお互いきっかけがなくて、捕まえることこそがきっかけと全ての始まりへと繋がる。
「少しは、手加減でもしろ」
意地っ張りは相変わらずか。
ヒイロは苦笑しつつ、昨夜の名残を惜しむかのようにそっと、その花へとくちづけた。
end.
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