それはついこの間のこと。
いきなりヒイロが訪ねて来て、誕生日祝だと花束をくれた。
自分の誕生日なんて本当は知らないから、かつて軽口にのせて教えたものはその場限りの冗談のようなものだったはずなのに。
その瞬間から、その日がオレの誕生日。
忘れられない、大切な日。
「うーん・・・」
ディスプレイを前に一人唸ってしまう。
プレゼントなんてものをもらってしまったわけだから、やはり相手の誕生日にはお返しに何かをあげるべきだとは思う。
しかし、どうしても決まらない。
そもそも必要最低限の日用品しか持たない相手に対して娯楽用品をあげるわけにはいかないし。かといって日用品じゃ味気ない。
ポピュラーな花束も悪いわけじゃないけれども、同じものを返すのも芸がなくてつまらない。
よって先ほどから悩みまくってしまっているのである。
「トロワにでも相談しようかなぁ」
似たような気質をもつ彼ならば名案が浮かぶだろうか。
「・・・やっぱり、ここまできて人に頼るのは悔しい」
すぐに思いなおす。
モチロン気恥ずかしいというのもあるのだけれど。
そもそも任務一辺倒の無趣味無感動無表情男に何かものをやろうとすること事態が間違いなのだろうか。根底条件が違うのならば答えが出ないのも当然のことなのかもしれない。
「物じゃないなら・・・他には?」
何かに気がついたように青の瞳がきらめく。
自身の考えに満足げに何度か頷き、そのまま楽しげに含み笑いをもらしつつ踵を返すデュオだった。
「これなら、きっと喜んでくれるよな」
その日自室に帰ったヒイロが見たものは。
綺麗に、というよりもド派手にかざりつけられた部屋。
テーブルに並べられたごちそう。
そして、疲れて床で寝こけるデュオの姿だった。
end.
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