プレゼント 宝物をしまおう。 ある日の昼下がり、そんなことを思いついた。 大事なものをひとつひとつ。 きれいな箱に入れて地面に埋めていく。 誰にも価値を認められていなくても、全てがわたしの宝物。 もう滅びるかもしれないこの世界で、生き残った誰かが掘り起こすかもしれない。 誰かに見つけられるその日まで箱は眠り続け、やがてこの世界でもう一度輝くのだろう。 その時わたしがいなくても。 わたしが生きた証は残る。 手から手へ。 人から人へ。 ああ、それは考えるだけでなんて楽しいんだろう。 いたずら心を起こして、日用品も入れてみる。 ひとつの箱にひとつの物。 思っていたより箱がたくさん必要になって、毎日木を削り細工を施していく。 手紙を海に流すように、宛てのない贈り物を埋め続ける。 いつかこの世界を生きる誰かへ。 それは言葉のない、メッセージ。 end.
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