ほっぺたの肉を人差し指と親指で掴んで、うにーっと横に引っ張る。
「……固い」
「………」
素直な感想だったのだが本人からは嫌そうな視線だけが返される。
怒られる前に、とばかりにデュオは指を離した。
「お前普段から仏頂面してるからこんなに顔の筋肉硬直してるんだぞ。
健康にも悪いらしいし、ちったあ表情動かせよ」
「うるさい」
微妙に残る指の感触が気持ち悪いのか、ヒイロが手の甲で頬を擦りながら言葉を返した。
「どうでもいい人間に愛想を振り撒く必要はないだろう」
「どうでもよくない人間にも仏頂面だろ、お前」
即座に訂正を入れつつ、デュオはふむと考えこんだ。
「少なくともオレはお前に愛想良くされた覚えないんだけどさ。つまりオレはどうでもいい人間だと、そういうわけか」
「………」
肯定も否定もない。
無言のままのヒイロを横目でちらりと見て、デュオは意地悪気に目を細めた。
「貰った鍵、返そうか?」
「……………」
チャリ、と指の中でチェーンが音を立てる。
その音がもたらす効果を正確に計算しつつ、デュオはにーっこりと微笑んだ。
「ヒイロ?」
「……………………」
無言でどう対応しようか悩んでいるらしいヒイロに自分の勝利を確信する。
―――さあて、どうしようかな?
とりあえず、デュオの勝ち。
end.
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