ウサギ



デュオは思案気にふむ、と首を傾げた。

ヒイロが帰ってくる前にこれをどうにかしなくてはならない。
かといって隠してどうなるというものでもない…。

目の前にはぴこぴこと跳ねまわる物体が1つ。
いや、正確には一匹…一羽?

とにかく見つかったら怒られるに決まってるし。
現在宿無しで転がり込ませて貰ってる立場の自分がこんなの飼えるわけもないというのはよーくわかってるし。

でも、このまま元の場所に捨てるのも可哀想だ。

ぴこぴこと部屋を駆け回っていた仔ウサギが飽きたのかデュオの足元に戻ってきた。

後ろ足だけ残してたちあがって、フンフンと臭いを嗅いでいる。

特に興味を引かれなかったのか、そのままストンと足を降ろしてまた部屋をうろつき始めた。

可愛い。
それだけの動作がとにかくもうむちゃくちゃ可愛い。

「どうしよう……」

時間に正確なヒイロは間違いなくあときっかり30分後に帰ってくる。

出来れば嫌そうな顔をされるのは避けたい。
いや、それを我慢しさえすれば無理矢理にでも飼うことは可能かもしれないが。

「どうし……そうだっ!」

ふと解決策を思いついたデュオは、大急ぎで端末へとかじりついた。




『ウサギを飼うことになったんだってね。おめでとう』

仕事中に唐突に端末に割りこんできたよーく知る人物からの通信。
身に覚えのない内容にヒイロは眉を顰めた。

「何の話だ?」
「さっきね、デュオが拾ったって言ってたんだ」

その一言で話の流れを理解した。
……つまり、これはカトルからの脅しだ。

 デュオが飼いたいんだって。
 勿論捨てろなんて言わないよね。
 そうなったら僕がどうするかわかるよね?

無言の内に笑顔がそう語っている。

―――仕組んだのはデュオだな。

横の繋がりや思惑まで一気に見えてしまって、ヒイロは怒りと言うよりもむしろ呆れてしまって溜め息を吐いた。

「……覚えてろよ」
「デュオに何かしたらすぐ引き取りに行くからね」

ぼそりとした呟きは、限りなく小さいものだったがどうやら相手に聞こえてしまったらしい。
にっこりと紡がれた言葉は、もう聞き飽きたようなセリフだった。

面倒なのはデュオとカトルの友情。
そして策士なカトルとそれを巧みに活用するデュオの連携プレー。

………なんて面倒な。

恨むべきはカトルなら絶対にヒイロを説得出来るはずだと頼んだデュオか、脅迫という手段を用いてデュオに味方するカトルか。

あるいはわかっていてこの状況に浸りまくる自分か。


抜け出せない袋小路に嵌まり込んだような状況に嫌気が差しつつ。

そろそろ溜まり込んだ鬱憤を爆発させてみようかと、思案のしどころなヒイロであった。

                                          end.




COMMENT;

ウサギネタです。
考えてみれば「うさ吟醸」なんてサイトやってて、HNが「うさぎ」で、一度も
ウサギ関係で書いてませんでした…(死)
だからというわけでもないですがウサギ小説。
本当は大分前に書いてあったんですがいまいち消化不良な感じだったので
ちびちび手直ししてました。
ヒマワリ小説までの場繋ぎ的にさらりと読んで下さると嬉しいです(^w^;
そうそう、このカトルは『スキ』シリーズのカトルと同系統の性格ですので果てしなく深〜い友情をデュオと育んでます。強いです。
ヒイロ、このタッグには弱いみたいです……。


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