ときどき、思っていた。
自分は彼のどこがそんなに好きなのだろう。
ときどき、問いかけていた。
何故こんなにも捕らわれてしまったのだろう。
戦争が終わって、平和になって。
けれど自分たちには「許されない罪」という名のものが残っている。
保護という名の牢獄のなか、静かに時が過ぎていく。逃げられないのではなく、逃げないだけ。そんなこと知ってたけど誰も何も言わなかった。
時がたつ。そしてやがて一人、また一人とそこを出て行く。
最後に残った二人。
どこにも行き場の無かった二人。
そして何も言わず、肌を重ねた二人。
どうしてそんなことをする気になったのか解らない。だって自分もあいつも男で、そういう趣味はなかった。
ただ、あの時彼を欲しいと感じただけ。
青と蒼の瞳が重なった瞬間に欲しいと思ってしまっただけ。自分だけを、見つめさせたかっただけ。
――今はそれももう過去の出来事。
振り返れば牢獄を抜け出し、一人歩いている自分。
でもふとしたはずみに思い出す。
例えばそれは水溜りに虹を見つけたとき。
太陽が眩しくて手をかざす瞬間。
子供たちのはしゃぐ声。
そんな時、とっても会いたくなってどうしようもない自分を知る。
ときどき、思う。
ときどき、問いかける。
何故、彼だったのか。
答えならとうに出ているのに、答えなんて無いことを知っているのに。
臆病な自分。逃げた自分。
だけどいまなら、きっと答えをみつけられるから。
多分今欲しいのは、あと一歩踏み出すための勇気。
end.
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