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デュオが見つかった、と。
おせっかいな連絡を寄越したのはカトルだった。
終戦と同時に姿を消した彼をわざわざ探そうなどとするのはカトル以外になく、別に見つかろうが見つかるまいがそれは自分には関係のないことだった。
せいぜいが「尻尾を掴まれるなんて馬鹿な奴だ」という感想を抱く程度。
だから、奴が記憶をなくしていると聞いた時にもさしたる感慨は抱かなかったし、カトルに会えとせっつかれた時にも鬱陶しかっただけだった。
けれど。
部屋に入った自分に振り返った、まっすぐな瞳。
自分を見ても何の感情も返さないデュオ・マックスウェルというものに違和感を感じる自分に気付いた。
傷だらけの体、失われた記憶。何があったか、そんなことはどうでもいい。
改めて、思い返す。
記憶に残るのは、鬱陶しいくらい纏わりついてきた存在感。
独特の響きをもつ呼び声。
何よりも感情を映していた明るい色の瞳。
……そして今目の前に残ったものは、同じ人間と思えない程無機質なそれ。
結局のところ、肝心なことは何一つ知らないことに気付く。
近くにいるように見せかけて、最後まで遠かった。
これから敢えて近づく気はないから、きっとこれが本当の最後になる。
―――ああ、そういえば。
たった一つだけ知っていることがあった。
『人肌が酷く嫌い』。
彼のパーソナリティに拘る部分で、自分が知るのは結局その程度のことだけだった。
そう、二人は遠かった。
最初から、最後まで。
end.
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