戦闘後軽くシャワーを浴びて、すっきりした気分でミーティングルームに入った。
そこではヒイロが、珍しくもぼんやりしていた。
無口なのはいつものことだが瞳に浮かぶ憂いが不気味だ。
あまりにも沈鬱な空気に、ついついデュオはヒイロに声をかけてしまった。
「…おい、ヒイロどした?酔ったような顔して」
「ああ」
これまたぼんやりと、けれどはっきりした声で返事が返る。
何気なく言っただけの軽口だったのに、その返事にデュオがぎょっとして降り返った。
「………おい、まさか本当に飲んだんじゃねぇだろうな?!」
今は戦闘直後とは言えいつ召集がかかるかわからない状況だ。
いくらなんでも酔うほど飲むなんて非常識過ぎる。
「酒は飲んでない」
「……?今酔ったって言ってたじゃんか」
会話の流れのおかしさにデュオが眉を寄せた。
それを無視してヒイロが近くを漂う三つ編みを唐突に掴み寄せる。
「お前に酔った」
髪に口付けられながら。
なんだか視線をばっちり合わせられてしまいながら、のセリフにデュオの
血の気がざっと音を立てて引いた。
「一度触ってみたかったんだが、やはりやわらかいな」
「えーと…ひ……ヒイロさん…?」
「なんだ」
ヒイロの目がやさしく細められた。
微笑みこそしないものの、無表情は変わらないものの、そういった動作だけで
気配がかなり軟らかくなる。
「…どうした?」
「………」
硬直したデュオに不思議そうに問いかけたヒイロ。
異常事態に直面してしまい、デュオはたまたまこの場に足を踏み入れてしまった
ことを、うっかり声をかけてしまったことを、心の底から後悔した。
―――後日ヒイロの異変は高熱のせいだと判明。
もっかデュオとして謎な部分はあの際のヒイロのセリフが単に熱のせいで出た
世迷い言なのか、それとも実は内心ヒイロがずっと考えていたむっつり系の
変態的発言なのかということである。
とりあえず、現在存在ごと警戒中。
end.
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