「お前なんて大っ嫌い」
「……オレに近寄るんじゃねーよ」
人に拒絶するのは相手のことを考えてしまって痛い。
でも誰かを特別にするのは怖い。
「寄るなってばっ!!」
でも一人でいること、孤独になることが何よりも恐ろしい。
人間に価値をつけるのはなんだろう。
それは自分じゃない、他人が決めることらしい。
「孤独」というのは誰にも価値を見つけてもらえないということ。
この広い世界でたった一人だということ。
それがとても怖いのに、自分を特別だと言われることがそれ以上に怖い。
まるでタチの悪い喜劇のようで。
こんなの嘘だ。
そう思うことでこころに壁が出来る。
「信じろ」なんて言葉それこそ信じられない。
自分だけしか信じられないなんて、言わない。
でも、自分以外のことはわからないというのも本当。
……違う、自分自身さえよくわからないんだ。
「………寄るな」
「断る」
ふいにかかった手前へと引かれる力。
間近へと接近されていたことはわかっていたけれど、対処が遅れた間に
しっかりと腕の中へと閉じ込められる。
「………え?」
ちからが抜ける。
嘘。怖い。
そんな感情すら溶けるように消えていく。
なんでだろう?
なんで?
「……お前は、やっぱりまだわからないんだな」
「何を」
どこか悔しげな声を耳にして問いかけても、答えは返らなかった。
ただ無言のまま、抱き寄せる腕に力が込められた。
――――何をわかってないって?
それでも、抱き寄せられた身体は温かくて、思考の全てを奪っていく。
警戒すら全て解いて。無防備に体重を委ねていく。
己の無意識が示したそれの意味すら気付くことなく、デュオは束の間の逃避のように
目を閉じた。
胸の奥で押し込められた何かが呻いた気がした。
でも、それもきっと錯覚。
end.
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