「さてヒイロ、究極の選択だ」
「……なんだ、いきなり」
「本日オレと一緒にいる権利とオレのチョコ、どっちが欲しい?」
「………」
訪ねてくるとは聞いていたが、かと言っていきなりドアを弾き飛ばして侵入してきたデュオの問いに、ヒイロは面食らった様に口を噤んだ。
「……チョコレート?」
「そう。今日が何の日か知らないとは言わせないからな」
言われて日付を見ると、14日。
だからなんだと考えかけて、ようやく思いついた行事にヒイロは目を細めた。
「バレンタインに、お前が俺にチョコをくれるのか?」
「お前がそっち選べばな」
当然、と言い放ったデュオにヒイロはかなり胡散臭いものを感じた。
―――絶対裏に何かある。
「…チョコレート」
「うん?」
「お前のチョコとやらを選ぶ。これでどうだ?」
お祭好きなデュオだから、きっと付き合うべきだろう。
そう予想をつけて答えを返す。
だがそれを聞いた瞬間、デュオの顔がうりゅ、と崩れた。
「やっぱりお前オレの体が目当てなんだーーーーーーーーーーーーっ!!」
「…………は?」
ヒイロの問いに答えることなく、デュオはバカヤローと叫びながら来た時同様猛然とダッシュして去って行ってしまった。
「……………しまった。そっちで来たか」
くしゃ、と髪を掻いても後の祭。
バレンタインのチョコは恋心の象徴。
デュオにとってヒイロの返事は心はいらない体を寄越せ、に決定したらしい。
しかも選べと言った割にはチョコもきっちり持ち帰っている。
「……仕方ない。チョコでも買って、迎えに行くか」
それを渡してやれば機嫌も治るだろう。
―――――面倒だな。
はあ、と溜め息を吐く。
けれど、それでも『恋人たちの日』と呼ばれるような日付だとわかった以上、本日デュオを手放す気のないヒイロであった。
end.
|