―――夢を見た。
白い世界で、目の前には大きな扉。
握り締めた手の中には鍵が1つ。
目の前の扉の名前を『心』というのだと自分は何故だか知っていた。
何気ない動作で鍵を鍵穴に差し込み、まわしてみる。
ガチャリ
鈍く響く音。
確かな手応え。
―――夢を見た。
扉ははたして誰のものだったのか。
自分は手の中の鍵であの扉を開けたのか、それとも閉めたのか?
今この手の中には1つの鍵が。
夢ではなく、現実の重みをもつそれがある。
『失くすなよ』
耳に残る、低い声。
多分扉は開いたんだろう。
今はもう消えてしまいそうな夢の残滓を、そう結論付けた。
扉ははたして誰のものだったのか。
手の中の鍵で扉は開いたのか、それとも閉まったのか?
end.
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