「うーーーーーーーん」
出来あがったばかりの作品を前に、デュオは唸った。
周りに散らばるのは緑とオレンジのカス。
ボゥルにくりぬかれた中身。
「うーーーーーーーーーーーーーん」
カボチャで作ったジャック・オ・ランタンを前に、デュオは腕を組んだ。
昔取った杵柄とでも言おうか、ナイフさばきは自信がある。
オレンジ色のカボチャは身が美味しくないと聞いたから、色にはこだわらないことにして普通のカボチャでチャレンジした。
「………」
似てる。
すっごく似てる。
どうしようもなく似てる、ヒイロに。
「うー…」
デュオは溜息を吐いた。
『この無表情がいけないんだ!!』と頑張って笑顔にしてみようとしたのがいけなかったのだろうか。
その引き攣った笑いはさながら「うみに○」。
―――以前それを見て「ヒイロに似てるー」と大爆笑してしまった手前、今更ヒイロに似てないとか言えない。困った。
「………」
デュオはちらりと時計を見た。
約束の時間まで、あと1時間。
『あれ?今月の31日?』
『…忘れてたのか』
『いやー……別の約束入れちゃったv』
『………』
『今度埋め合わせするからゴメンなーいいよなーあ、いい?やったーアイシテルよヒイロ−』
『………』
『なんだよその何か言いたそーな目は』
脳裏にあの恨みがましげな目が甦るからイカンのだろうか。
いや!とデュオはふるふる頭を振った。自分は遊びたいのだ。けして無表情を前にむなしくデータ解析なぞしたくない。
断じてしたくない。しかもアレは仕事じゃないし。いや勝手に懸賞に応募したのもヒイロと共同名義にしたのも自分だけど。でもノルマ分は今日じゃなくても出来るし。
「………」
デュオはちらりとカボチャを見た。
これが奴に見えるのはちょっとは疚しい部分があるからであって、けして思わず似せてしまったわけでは…ないだろう、多分。うん、多分…。
思わず作ってしまっていた握りこぶしがぱたりと落ちる。
「………」
このまま遊びには行く。
行くけど。
「どうせ同伴なら、カボチャより本人引っ張ってく方が生産的かなー…」
なんか悶々としてしまう気持ちを持て余して、デュオは呟いた。
カボチャをつつきつつ、口をついた言葉を検討していく。
「………うん、連れてくか。仮装してお邪魔して」
どうせお菓子なんかないだろうから、いたずら代わりに連れ出して。
「うん、そうしよう」
勝手に自分の中で結論づけると、デュオはにっこりと笑った。
出来あがったジャック・オ・ランタンを手早く荷物に詰めて支度する。ヒイロの分の仮装道具も忘れない。
荷物片手に勢いよく部屋を飛び出したデュオは、その勢いのまま力いっぱい隣の部屋のドアを蹴り上げた。
「TRICK or TREAT!」
何かくれないといたずらするよ?
end.
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