やはりマズかったのは出会い頭の二発だろうか。
いや、その後海に置き去りにしてさっさと逃げさせてもらったことかもしれないし、パーツ取られたことを根にもって嫌味なくらい付けまわしたことかも。
名前を知ってからは嬉しくて、異常なほどに呼びまくって人目を引いていたから秘密主義のあいつにすればそれもかなり腹がたったかもしれない。
ああ、でもバルジではヘンな顔しつつも助けてくれたからその頃は決定的じゃなかったのかも。
とすると月基地だろうか……その後は今まで会ってなかったわけだし。
一緒にいなかった間に何かバレた線も捨てられないし、思い出しというのもあるが、何しろ心当たりがありすぎてどれと特定することも出来ない。
とにかく存在する現実はただ一つだけ。
ヒイロは、オレを嫌っているという覆しようもないただその一点だけだ。
「俺に関わるな」「近づくな」「邪魔をするな」の切り捨て型だったヒイロが変わったと気付いたのはいつだっただろう。
とにかく、つい最近だ。
いや、最近以外でも「ヘンだなー」と思うことはあったんだけど、変わったとまで断定出来たのがつい最近と言おうか。
とにかくヒイロは変わった。
端的なしゃべり方も無表情なのも変わらないけれど、纏う気配や言葉に出来ない何かが変わった。
以前のように他者を問答無用で排することはもうないだろう。
オレ以外は。
そう、「オレ以外」はなのだ。どうにもかなりのところ嫌われたらしい。
姿を見るだけで眉を顰めてみせる。声をかければ露骨に嫌そうな顔だ。必要最低限の言葉しか伝えてこないし、それ以外のときにはシカトときている。
どう上手くフォローしているんだか知らないが他のヤツらは気がついていないらしく、オレが愚痴を言っても軽く流されてしまう。
でも誰にどんなに否定されようと、さすがに当事者だから鈍いオレだって理解するさ。
ほら、今だって睨んでいる。
これで嫌われてないなんて誰が信じられるだろうか?
全くもって望みのない、やっかいな奴を好きになった。
これも、気付いたのは最近だけれど。


「おい、ヒイロ。こっち見てるぞ、いいのか?」
「ああ」
顔色も変えずにキィを叩きつづけるヒイロをちらりと見て、トロワが堪えきれずに吹き出した。
さっきまで必死の様子で見ていたのに気付かれた途端そっぽを向くなんて、まるきり子供の恋愛だ。
「いいかげん教えてやったらどうだ?」
「切り札は最後までとっておく主義だ」
「手遅れになるかもしれないだろう」
「すると思うか?」
この俺が。
無言のうちに続けられた言葉は、その不敵な笑みから容易く伺える。
「……デュオも不幸だな」
「あいつの自分の事に関する鈍さは天然だからな。これ位で丁度いい」
―――せいぜい意識してもらおう。

                                          end.




COMMENT;

かなり長らくお待たせしました。
実は出してないことを忘れてた、ヒイロバージョンです(爆)
テーマは『ヒイロがデュオを嫌いな話』。
……テーマからはちょっと…いやかなり反れた気もしなくもないんですが適度に甘くて自分好みでした。
ヒイロ版、デュオ版と2種類作りましたがどちらにどちらの話をいれるかは書いた後で決めたんです。
お気に入りの方をヒイロ版に(笑)
実は最終的にはなくなったんですが、途中微妙に余りましてさびしー思いをしたのです。
やはり皆デュオが好きなのね…(TwT)そりゃデュオも好きですがなんだか余り具合に明らかなる差が。


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