『禁煙にご協力ありがとうございます』
店内禁煙の店などでときどき見かけるこの表示。
素直に取ればなんということはないが、逆に勘ぐってみれば立派な脅しである。
思ったままそう口にしたら、五飛に「そんなことを考えるのはお前くらいなものだろう」と呆れられた。言外に「ひねくれ者」と言われたのも同じ。
腹がたったけれどそうもはっきり言われてしまうと言い返す言葉がなくて。
胸の中になんともいえないもやもやを抱えてカトルに愚痴ったら、「この間、ヒイロも全く同じことを言ってたよ」と笑われてしまった。
意外なところに意外な事実。
予想外の人物との繋がりを知ってしまってちょっと得した気分。
でも、本人には教えてやらなかった。
こういうのはひみつだからこそなんとなく楽しいのだ。
後に、カトルから聞いたトロワがヒイロに教えたらしいけど、その時のヒイロの表情がなんとなく予想出来るから面白いものだ。
きっと苦虫を噛み潰したような顔をしていたに違いない。
街を歩いて、ふと立ち止まる。
同じことを、どこかで彼がやってるかもしれない。
違うコロニー、けれど同じ人工の空。
同じ世界で、今、生きているということ。
どこかでなにかが繋がっていく。
それが、生きるということ。
少しづつ変わっていく世界、そして自分。進む道は、またどこかで交わるのだろうか。
交えることが、できるのだろうか。
end.
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