ある日、本部に出向くと誰かが忘れていったらしい用途不明の物体が転がっていた。
ふと興味がわいていじってみるが、一体何に使うのかも定かではない。
形が変わっているからオブジェの一種かとも思ったけれど、なんとなくだがそれとも違うような気がする。
「なんだー?コレ……」
ううんと首をひねってしまう。同時にわくわくしてきた。
正体不明のおもしろそうなものが目の前にある上、謎ときじみている。
「持って帰ってヒイロにも聞いてみよ♪」
忘れて帰るほうが悪いとばかりに、夕方デュオはそれを拝借して帰宅した。
「『あそびじゅつ』だな」
「へ?」
どうだとばかりに出して見せた物体に、ヒイロはあっさりとそう言った。
これから二人でいろいろ推理しようと思っていたデュオとしては拍子抜けといったところである。けれど、それよりもヒイロの言ったこの物体の名称の方が気になった。
「遊び術…?」
「……それでもたぶん間違ってはいない。『遊び+美術』かもしれないし、両方をかけたかもしれないな。まあ、いわゆるオモチャの類だ」
「おもちゃ………これがぁ?」
どう見ても高そうだし、芸術作品と言われたほうが納得いったような気がする。とても不思議な形の幻想的なおもちゃ。
言われなければ想像もつかない可能性だった。
「お前、また話を聞いてなかったな…。サリィが現場は荒むからと言ってこの間持ち込んでいただろう。これだけでなく他にもあって、まとめてキットにいれて有料で貸し出す、本職の芸術家達の生んだ子供用のおもちゃだ」
「子供用……」
「だから、俺達のために持ってきたんだろうな」
戦争が終わっても戦わせてしまうことに対する、彼女なりのこころ遣いだったのかもしれない。
「ミーティングルームにあったってことは、誰か遊んだんだろうな」
「そうだな」
「なんか、いいな」
微笑ましい思いと共に改めてそれを見る。
子供用。これからの未来を担っていく、そんな存在の為に生まれた芸術作品。若手の芸術家が創り出すそれで、新たな時代の感性や感受性が育っていく。
そうして、同時にこれまで時代を支えてきた存在のこころを癒す役目も持つ。
軽いようで重い、おもちゃという存在の在り方で。
「よし、せっかくだからオレも遊んでみよっかな!」
「壊すなよ」
「だーれがっ!!」
血に濡れてしまった自分たちも、こんなもので少しは癒されてもいいのだろうか。
ふと、そんなことを思ってみた。
「………ヒイロ。遊び方、わかるか……?」
「……………」
end.
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