姫始め



正月である。
誰がなんと言おうと、正月なのである。
そしてデュオは、新年しょっぱなから押し倒されていた。

「おい、ヒイロ……この体勢はなんなわけ?」
「見ての通りだ」

さらりと、さも当然のように言われても、それで納得出来るものでもない。

「……嫌なんだけど」
「却下」

取り付くしまもなく、着々と服ははだけられていく。

初日の出を見て、新年のあいさつをして、おせちを食べて。さて次の恒例行事とはなんだ?と聞いたらその場で押し倒されたのだ。

デュオとしては頭の中で無限大の「?」が飛び交っている現状。
しかし、そのまま流されるわけにもいかないのでとりあえず目の前の髪を力一杯引っ張ってみる。

「だから、理由を言えってば」
少なくともデュオには朝の光の差し込むリビングでコトに及ぶ趣味はない。
理由があるなら応じるかと言われればその内容次第…というところだろうか。

「………………L1の伝統行事に『姫始め』というのがある」
「ひめはじめ?」

しぶしぶという感じで答えたヒイロの、その聞き慣れない単語にデュオは首を傾げた。
文化圏が違えば同じ行事でも祝い方が大分違う。デュオの知識の中に現在の体勢と関係しそうな該当行事は存在しなかった。

「JAPでは1年最初に行うことになんでも「〜始め」と付ける。姫始めとは、1年の最初に行う、………わかるな?」

すっ、と言葉の代わりに身体をなぞられて構えてなかったデュオは思わずヒイロのシャツにしがみ付いてしまった。
恨みがましげな視線を向けられても飄々としているヒイロになんと文句をつけたものか口をぱくぱくさせる。
そしてデュオが苦情を言うよりも早くヒイロが次の言葉を紡いだ。

「これも伝統的な恒例行事の1つだ。縁起事だから拒否権はないと考えろ」
「はあ?!」

どんな縁起事だ、と思ったがそれを否定できる知識はデュオの中になかった。
とてもじゃないが調べに起き上がる事は許されそうもない。
首筋に口付けられて反射的に反応を返してしまいながら、デュオは必死で思考を巡らせた。

「………後で調べてお前の都合のいい解釈とかだったらオレ実家に帰るからな」
「…………………………」

実家=スイーパーグループ。
宇宙を巡るわけだから1回消えるとなかなか帰ってこなくなる場所である。

とりあえず、ヒイロは無言だった。


お正月。
しかも元旦はそんなこんなで幕を閉じたのだった…

                                          end.




COMMENT;

長らく裏更新のない中、ついに1年経ってしまいました…(汗)
去年「今年は頑張らなくちゃ!」の気合いと共に掲載された裏版正月限定小説です。
今年は…やはりのんびりと……(-w-;;
以下去年の文。

あけましておめでとうございます!
せっかくなので裏も限定小説しました。
しかしありがち姫始めネタです……(滅)
(いや一度はやるべきかと…)
最初は最中まで入れようかと思ったんですが正月早々でぃーぷなのはマズイかとちょっと自重v(・w・)きらきら
裏は更新遅いのに懲りずに通ってくださる方々、本当にありがとうございます。 今年はもうちょっと…もうちょっとがんばります!!(気合い)

昨年はお世話になりました。
今年もどうぞ宜しくお願いします。<(_ _)>


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