深夜といえども今日は特別な一日で、道には同じ方向へと歩く人の影がちらほらと見えた。 変わったばかりの日付には本当は深い意味なんてないはずなのに、気持ちの上では何かの区切りと認識している。 本当にただそれだけのことで、気が引き締まるような感慨深いような気がするから不思議なことだ。 「うー…さむ…」 かじかんできた手に息を吹きかけさするけれど、その程度で感覚が戻るはずもない。 手袋は必需品だったな、と今更な感想を抱きつつ穴場へ向かうために道をそれ、人気のないところを奥へ奥へと進んで行った。 海辺で見るのもいいかもしれないが、そこだけで見ればいいってもんでもないのだ。 この先の丘では、ちょっと足場は悪いけれど海と崖と街並みが一望出来る。 一年で最初の夜明け。 たった一人で迎えるのも、悪くない。 偵察目的でうろついてた時に偶然見付けた場所だけれど、秘密の場所で静かに迎える新年もなかなかいいものではないだろうか? そう思って辿り付いた場所なのに、そこにはすでに先客がいた。 考えてみれば同じ任務で同じ街に来て、似たような位置をうろつけば見つける場所も同じ……というのはそうおかしなことでもない。 互いに相手が誰か気付いた瞬間に、気まずい空気が流れる。 ここまで来た気持ちはどちらも似たようなものだったのだろう。 けれど方向転換しようとしたデュオを、ヒイロは手招いた。 途惑いつつ、迷いつつ、結局はデュオもその誘いに応じた。 「………まさかお前に会うとは思わなかった」 「俺もだ」 その後は沈黙が落ちる。 特に言葉は必要じゃなかった。 無言のまま正面を見つめる二人の視線の先で、やがて空が白み始め、水平線の彼方から赤っぽい固まりが顔を出し始める。 通常であれば瞳を焼くその光はまだうすい靄に覆われ、例えばレンズ越しであっても見つめることが出来る状態だ。 肉眼であればなおの事。 真ん丸の赤い太陽は、やわらかな光に包まれたまま徐々に上に上がって来た。 そうして、ある一点を越えたところで強烈な光を放つ。 それは、今年最初の夜明け。 初日の出と呼ばれる、地球だけの行事。 上がり切ってしまえばいつもと変わらぬ朝の風景で、なんとなく物足りないような気持ちになりながらデュオはちらりと横を覗き見た。 ただまっすぐ前だけを見ている硬質な頬のラインが視界を掠める。 こういう時JAPではなんて言うんだっけ、と考えてからデュオはくるりとヒイロへ向き直った。 「あけましておめでとう、ヒイロ」 今年もよろしく。 にっこり笑って告げられた言葉に対し、しばらくデュオの顔を眺めてからヒイロは無言でその丘を降りて行った。 シカトされたことにむっとしつつ、まあ十数分とはいえ一緒に横に立ってた事を考えればまだマシなのかもしれない、とデュオはわめきそうな自分を宥めた。 「今年の目標は…やっぱりあのノラをもうちっと懐かせることだよなー」 ふっふっふ。 タチの悪い笑みを浮かべるデュオは、ふいにそういえば、と気がついた。 「あいつ、オレのことこの場に呼んだんだよなさっき……自分から」 ただの許容ではなく、手招いて。 にーっと、さっきよりも深い笑みが顔に刻まれる。 「なんか先行き明るそう♪」 今年は、いい年になりそうだ。 end.
去年のお正月限定小説です。 今見ると抱負に去年から成長が感じられません…(笑)以下去年の文。
あけましておめでとうございます! ついに21世紀です、新世紀です。おめでたいです!!(*><*) うさ吟醸も恒例の限定小説です(笑) 正月といってもコレくらいしか出来ませんけど微妙におめでたい気持ち♪ 新年の抱負とか特にはないんですが、やっぱりちゃんと更新できたらなーとは思います。
昨年はお世話になりました。 本年も、どうぞ宜しくお願い致します<(_ _)>
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