「ごめん……」
顔に引き攣った笑みを張りつけて、声も強張らせてしまいながらとりあえずデュオは謝ってみた。
しかし目の前の無表情はそんなことでは揺らがない。
いや、元から表情がないからいつも通りと言ってしまえばそれまでなのだけれど、デュオにはわかるのだなんとなく。
これはかなりのとこ怒らせてしまったらしいと。
「ヒイロさーん?」
「………」
見事なまでの無視。
一瞬腹が立ったが、それはぐっと堪える。普段ならともかく、今回は自分が悪いとわかっている以上平謝りするしかない。
「本当にごめんったら…」
「………」
お祈りポーズでうるうるとしてみせても眉一つ動かない。
むしろふざけたようなデュオの態度に表情筋はより硬化したような気配さえある。
デュオの方は、実は真剣過ぎてどう謝ったらいいかわからなくて逆にふざけたような態度になってしまっているだけなのだが、それを分析出来る程二人とも大人ではなかった。
カタカタ、カタカタ。
キィを叩く音は絶えないし、デュオがここへ来てからずっと作業のスピードは変わることをしない。
「……………ヒイロ?」
「………」
そっと呼びかけても返る言葉はなくて、デュオはしばらく無言でその横顔を見つめた。
―――だって。
本当に来てくれるなんて、思わなかったんだ。
自分はどうやら彼をかなりのところ見誤っていたのかもしれない。
初めて、それに気付いた。
end.
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