お引越し



「なあ、ココってどこ?」
「見ての通り、荒野だな」
「だから、どこ?」
「知るか」
ある日目が覚めてみれば、まったく別の場所に移動していた。
見渡すばかりの荒野。
確かに、何か引越しするとかいう話を聞いた覚えがあるし、ココが元自分がいた場所でもないこともわかる。
でも、思い出せない。
自分の名前以外、相手の名前以外。
ここがどこなのかさえ。
「確か、この星を、発展させなきゃなんだよなぁ」
なんとなく覚えているような気がするたった一つの「任務」。
「その為に人間を連れてくるんだったな」
なんとなく覚えている「方法」。
「……」
「……」
「ま、いっか!」
思わしげな沈黙の続く中、唐突に明るくなった声にヒイロは振り向いた。
先程までわずかに不安をにじませていたデュオが微笑んでいる。
「お前と一緒なら、なんか大丈夫な気がする」
そのままの笑顔で告げられて、ヒイロは眉を顰めた。
「…能天気」
「なんだよ、暗いよりかいいだろ」
わざとらしくつかれた溜め息にむかっときて睨み付ければ、視線を逸らすように後ろを向かれた。
「おい、ヒイ…」
「俺もお前と一緒で良かったと思う」
「え?」
振り向いて、続けて呆れたようにもう一言。
「なんて、言うと思ったか?馬鹿が」
「……………ほほう…」
静かな大地にバキッという鈍い音が響いた。
「金輪際、お前と一緒には仕事しないかんなっ!!」
「……」
不服そうなヒイロの視線は無視された。


  広い卯宙のどこかには。
  防人のヒイロくんとデュオくんが住んでいて、交替で
  着ぐるみを着込んで防人をやっているそうな。
  さて、その防人の名は?

  それは皆さんご存知でしょう。

                                          end.




COMMENT;

宙ネタ再び。 2000年4月にあの話テイストで書いた引越しの話でした。
この頃はもうあの話ブームも終わった頃…でしょうか?(うろ覚え)
宙のサーバー移転=引越しの時、防人は記憶喪失になるのです。
つまり、マスコットキャラクターが今までこっちが教えた言葉を全て忘れちゃうんですね。
うさぎの卯宙の防人うさぎんは教えこんだ単語のせいでヒイロ、もしくはデュオが
着ぐるみを着ているのだと(個人的に)呼んでました。
それを前提に、引越し時に書いたお話です。

そうそう、宙は引越しすると背景が初期値に戻り、荒野になります(笑)


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