「本気で嫌だったらもっと抵抗したらどうだ?」
どう考えてもわざとだ、と断言出来るような陰湿さでゆったりと指が滑る。
頬から首筋へ、そしてもっと下へと押さえ込まれたこの体勢を思い知らせるかのように辿る手。
だけどからかうようなセリフに反して、目は笑っていなかった。
逸らすことは出来ずに、これだけは譲れない一線として睨み上げる。
「まさか…」
―――今、ここでこいつを殴ってやれるものならば。
震える拳を、悟られないよう強く握り込む。
「初めて、か?」
そんな筈はないだろう?
最初から嘲る為に洩らされただろう言葉に、ただ、沈黙を返事とした。
end.
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