自分に必要とも思えなかったし、ほとんど忘れていたといっていい。 『告白に、相手の年の数だけのバラの花を』 思いついた途端に実行したくなった。少なくとも相手は物をもらえば大抵は喜んで受け取る類の人間だ。 拒絶されるとも思えないし、ある意味今更とも言える。 いきおい、そのまま花屋へ直行した。 だが、気に入らない。
確かに綺麗なのだが・・・この「バラ」という花のイメージがどうもあいつにそぐわない気がする。 黄色い、大輪の花。 夏の花だと記憶している。 ――これでいい。 ――いや、これがいい。 花束にしてちょうど16本。ひとつひとつが大きな花なので、抱えても相当のボリュームがあった。 カードで支払いを済ませ相手の部屋へ向かう。任務があるとぼやいていた通り、留守だった。 こっそりしのび込み目的を果たし。 ベッドルームで最後の仕上げ。
これを見てびっくりするだろう相手の顔を思い浮かべ、苦笑がこぼれる。 どうやら、大分自分も変えられてしまったらしい。 それを不快に思わないことが一番問題なのかもしれないな、と。 決して相手には見せない柔かい微笑みを浮かべ、そこを後にした。
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あの話5のヒイロサイドです。 |