rain



「オレ、雨降ってんのけっこう好きかも」

いつもはうるさい程の大きな声でしゃべるデュオの独り言のような囁く声に、
ヒイロはふいとそちらを向いた。

見られたことに気付いたのか、デュオが振り向いてきて視線をヒイロへ向ける。

「なんとなく閉じ込められたような気にならない?」

ゆっくりと、柔かくひろがる綺麗な微笑み。
なんだか急に不安に思えてきて、つい胸元へと抱き寄せた。

「どうした?」

「なーに甘えてんだよ、お前」

くすくすと、答えでない答えが返る。

「…お前が、消えるかと思った」

「…………どこへ?」

クセのない黒髪を、くしゃりとかきまぜる。


――逃げたい。


選択は今日も先延ばしに。
青い瞳が秘める微かな苛立ちに、まだヒイロは気付かない。

                                          end.




COMMENT;

あの話その2です。めずらしく暗め(?)
そこはかとなく誘い受けとの評判をいただきました。私の書くもの
にしては本当にめったとないことなので感動しました(笑)


back