あまりの気持ち良さについ惰眠を貪っていたトロワは、いきなり部屋に侵入してきた人物に遠慮もなくガタガタ揺さぶられ起こされた。 何事だ、と少々はっきりしない頭でぼんやり考えていると、必死の形相をした既知の人物が熱意も顕に詰め寄ってきた。 「ねえトロワ、昨日君と話してたあの子誰っ?!」 その時のカトルはバックに炎が見えるようだったと、後のトロワは語る。
トロワにお願いして(注:トロワ曰く『お願い』というかわいい次元のモノではなかったらしい)紹介してもらった甲斐があったというものだ。
ちなみにそのトロワはデュオにカトルを紹介した後とっととどこかへ消えてしまった。 自分の前でにこにこ微笑む少年をあらためて見つめる。
やっぱり好みだ。 ほう、とカトルは溜め息を吐いた。 なんて僕は惜しいことをしていたんだろう…。塔に入ってもう何年経つんだか。
今まで一度も見かけなかったなんて、なんて酷い運命の巡り合わせ。 デュオ・マックスウェル。 名前だけなら知っていた。千年に一度と詠われたほどに見事な力をもつ法術系の少年。 まぁ剣術系のヒイロだの五飛だの知識系のトロワだの、同じようなコトを言われている存在が今の代には何故かぽこぽこいるのだが、噂だけではなく自分の目で一度チェック入れるべきだったとは今になって思うことだ。 他のメンツの顔は見ていたのにデュオだけ会ったことがないとはこれ如何に。 何かしくまれていたような気さえしてしまう。……後で調べてみよう。
後悔は、後でするもの。 「ねえ、デュオ…っと、呼び捨てでいいかな?」 「ん。構わない、っていうかその方が有り難いけど」 「そう。じゃあデュオ、僕のこともカトルでいいからね」 「了解」 「トロワもどっかに行っちゃったし…とりあえず、お近づきの印にお茶でも一緒しない?せっかくだし、僕の奢りだよ」 「マジ?らっきーっ」 カトルは、自らの浮かべられる最高の笑顔でもってデュオに微笑みかけた。
「ヒイロ、ヒイロはいるか?!」 ノックもそこそこに飛び込んできた、いつも落ち着き払った彼のただならぬ様子に五飛も話を促すような視線を向けている。 「丁度いい、五飛もいたか。まずいぞ、カトルに、気付かれた……」 自分を落ち付かせるように一言一言区切って紡がれたトロワの言葉に、それが意味することを悟ったヒイロと五飛の顔がさっと強張る。
「会わせたのか?!」 3人が黙り込んだ。 頭に浮かぶのは問題の人物カトル・ラバーバ・ウィナー。
代々神官の家系に生まれた少年で、かなり手強い。能力ランクだけなら問題外というほど低い数値だが。
「あいつの今のランクは?」 デュオに合わせて。
数年前、ふとした縁でカトルと知り合った時から、彼の性格や好み等は判明している。 さすがカトル、というところである。 「カトルは天使希望だったな、元から…ということは進路変更の必要なし。一気に候補に 入る。………やられたな」
「これで4人か」
好みの人間には限りなく友好的な存在、カトル。 彼らがデュオに抱く好意はそれぞれ違うし、それに新たな要素をもったカトルという存在が乱入してくることは事態をさらにややこしくするとしか思えない。
「それで、今二人はどうしてる」
「どうせ餌付けでもされているんだろ」 将来を嘱望されている3人は、くだらないが本人達的には真剣に、如何にして二人の友情を妨害すべきかに頭を悩ませていたのだった……
end. |
デュオとカトル出会い編。
スゴイ長引きました…この過去編。やっぱり書きたかったトロワのだけで止めておけば?!(爆) 何ヶ月やってたんでしょうか。本編差し置いて…。 設定だけはあるのに、裏でごそごそやってて疲れた感じです(^^; 後は決めたことを書ききるだけです。 次はようやくリリ様登場ですね♪ そろそろデュオのサイドも出てくると思うんですが、今回気づいてしまったことは、多分4人の中で一番このデュオに夢見てるのはヒイロだという事…。 いや、デュオの方がヒイロに巨大なネコ被ってるのかも。 何はともあれお待たせしました、ANGELNOTE過去編完結です! |