ヒイロ・ユイは悩んでいた。
一言で言えば恋わずらいである。
―――――恋わずらい。
なんと彼に似合わない単語であろうか。ここまで似合わない人間も珍しい。
しかし、彼を知る人間全てが石化するようなことが実際起こっており、
お医者様にも治せない病に彼は本気でかかっていたのだ。
お相手はデュオ・マックスウェルというお嬢さんだ。
―――――お嬢さん。
これまた首を傾げられそうな単語である。しかし、これもマジだ。
ヒイロしか知らない。
ヒイロだけが知っている。
死神と呼ばれ、漆黒のガンダムのパイロットであり。明るい笑顔と不屈の
精神が印象的なデュオ・マックスウェルが実は少女であることを。
ここまで考えて、ヒイロはふむ、と沈黙した。
自分しか知らない。
―――――と、いうことは。
「もしかして、悩む必要ないか?」
ヒイロはぼそりと呟くと部屋を出て行った。
「わーっわーっ!!何しやがるーーーッ!!!!」
「大人しくしろ」
「誰が黙るかッ!!」
「………」
「ぎゃあああああああああああああっ」
ヒイロ・ユイ。
意志が固いといえば聞こえはよいが、単に自己中との意見もある。
最悪の相手に弱みを握られたと言うか、問題は相手の馬鹿力と言うか。
悪魔に魅入られてしまったデュオの先行きは、暗い。
end.
|