人類皆兄弟








太乙の横顔が目に入った時だった。
「あ……」
突然、玉鼎の胸が高鳴った。
「ん? どうしたの?」
「い、いや……」
太乙から目線をそらし、玉鼎は今の感覚をもう一度考える。
「へんな玉鼎」
横では太乙が笑っていた。


「私は太乙に……見とれてしまっていたのだ……」
暗い顔をして玉鼎が呟いた。
「私はっ、私は一体……!!」
「あらあ、パニックになっちゃてるよ」
「うーむ……」
それを聞いてるのは太公望と普賢。
「私は一体どしてしまったのだっ! 太乙と言えば大事な友人じゃないかっ! それを相手に私はっ……」
「欲情しちゃたんだ」
「!!」
「普賢、露骨すぎだ」
太公望の助言はすでに遅かった。
玉鼎はすっかり固まってしまった。
「お、おい、玉鼎っ……!
 こら普賢、玉鼎にとっては初めての経験なのだからもうちょっとソフトにいけ、ソフトに」
「しょーがないなあ、もう。ま、初心者だしね」
実は、崑崙ではその道で有名なホモカップルの普賢と太公望。
今回のことで玉鼎が相談できる唯一の相手だった。
「ねえ、玉鼎聞いて」
なるべく柔らかく普賢が話しだす。
「…………」
「ちょっと玉鼎」
しかし、玉鼎はまだ固まっている。
「玉鼎っ!」
「げふっ!!」
普賢はいきなり玉鼎の頬をグーで殴った。
「い、いたい……」
「こ、こらあ! 普賢、殴るな!!」
「だって反応遅いんだもんっ!!」
さらに殴りかかりそうな普賢を太公望は羽交い締めにする。
「そういうところも含めて付き合ってやれっ!!」
「えー、メンドくさいなあ……」
「…………」
玉鼎は殴られた頬をたださすっているだけだった。
文句ひとつ言えてない。
「とにかく玉鼎は目覚めて間もないのだ。親切にしてやれ」
「そうだね、とりあえず、歓迎しなきゃね」
「そうだぞ」
そして、ふたりはぱっと玉鼎を振り返る。
「おめでと――――玉鼎、男に目覚めたんだねえ、一緒だね」
「かっかっか、同じ趣味どうし仲良くしようではないか」
「ち、チガウ!!」
状況について行けないながらもなんとか否定する玉鼎。
「わ、私のはそういう趣味ではないっ!」
「何それ、今更」
いきなり普賢の顔つきがキツクなる。
「だ、だからっ……私が見、見とれたのは太乙だけでっ! 
 別に太乙が男だから見とれたワケではないっ……!!」
「かあっ! フザケンな!!」
「ぐはっ……」
今度は太公望が玉鼎を殴った。
「あーあ、痛そー……」
同情だけする普賢。
「よく聞け! 玉鼎!!」
そのままビシっと太公望は玉鼎を指差す。
「男に欲情した時点ですでにおぬしもゲイだ!!」
「なっ……」
「お――――っ」
玉鼎は絶句し、普賢は拍手する。
「チ、チガウ!! 私の思いはそんな俗っぽいものでは……!」
「だあ――――!! ムカツク! 自分だけ優位に立とうとするな!」
「そーだよー、こんなに僕らが歓迎してあげてるのにさ」
「おとなしく、ズレた自分を受け入れろ! 
 ただでさえこれからヤれる相手が少なくなるというのに!」
「ねえ、女とノーマルな男除いたらあと何残るって感じだもんね」
二人が語る少数派の悲しみ。
「わしらとてイロイロ我慢してるのだぞっ」
「そうそう、僕らなんか相手いないから互いに慰め合ってるんだよ」
「え?」
いきなり話が妙な方向に向いてきた。
「お、お前たち好きあってるんじゃ……」
「やだなあ、まさか。ねえ望ちゃん」
「そうだのう、同癖の男は少ないからな、まあ発散のため貴重な仲間だわな」
「ねえ」
顔を見合す二人。
「別にキライじゃないよ」
「まあ情は湧いてるしな」
太公望と普賢は共に声を立てて笑いあう。
「…………」
呆気にとられて玉鼎は何の言葉もなかった。


「――――私は……」
玉鼎は太乙に向かって言った。
「私はお前が好きなのだろうな……」
「え……」
玉鼎は妙に自信を持ってそう言えた。
なんだかあの二人に比べると、自分の思いがかなり純粋に思えたからだ。


「一緒だっちゅうの」
「ねえ、キレイぶっちゃってさ」
影からその様子を伺っていた太公望と普賢。
「まあ、これから玉鼎にはイロイロと教えてこんでやろう」
「わー、おもしろそ――――」
そしてイヤな子らに目をつけられてしまった玉鼎だった。

 

 








 

すんません。
オチないっすよ……
なぜなら、これは「玉太を書くのよお!!」と思い立って、それだけで書いたから。
だからオチが思い浮かばなかったんだね(何がやねん……)
ほんとにゴメンよお。
世の玉太小説をもっと読んで勉強せずに書いたもんでね……(涙)

 

 

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