インプリンティング
楊ぜんが目覚めるとそこには太公望の寝顔があった。
まだ深い眠りについている太公望を起こさないように、楊ぜんはゆっくりと起き上がる。
全く、昨日は大騒動だった。
なんとかベッドまで太公望を連れこんだものの、いきなり自分がやると言い出す始末。
「なーんでわしがやられねばならんのだ!」
「なんでって……」
「普通、惚れたら相手のことを大事にするもんだろう、だったらわしが希望するほう
をやらせろ!!」
「それは絶対やです!!」
「ズルイではないか! 自分もいやな事を他人に押し付けるのか?!」
こんな押し問答がしばらく続いたのだ。
それをなんとか説得したのはベッドに入りこんでから数十分後。
「体力のあるほうがやるんです! これは絶対なんですっ!!」
これで何とか押し切り、ようやく事が始まった。
始まったら始まったでこれまたうるさい。
「ぎゃ―――――!! 痛い! 痛い! 痛い――――!!」
「ちょっとぐらい我慢してくださいよー……」
「やっぱり、わしを騙したな――――楊ぜん!!」
「騙すって……」
「うわっ、もうイヤだ! やめろ!!」
「そんなっ、途中で無理ですっ」
「じゃあ、変われ!」
「同じですっ、無理ですって!」
最終的に無理矢理やり続け、結局大人しくなったのは太公望が寝ついてからだ。
「なーんか、全然艶っぽい雰囲気がなかったなあ……」
太公望の寝顔を眺めつつ、一人呟く楊ぜん。
「けど、まあ、それはそれで中々……」
もう感覚さえ盲目状態である。
しかし、さすがに寝ている太公望は喋らない。
振りまわされることもない。
「いっつもこんな感じだったらいいのに……」
楊ぜん素の言葉。
とは言っても、動き回って話す姿がなければ意味がないのも確か。
なんとか昨夜の色気の無さは、この朝の一時で取り戻した。
朝の会議が始まる。いいかげん起こさなければ。
「二人して遅刻ってのもいいけど、今回は同伴出勤だけにしときます」
楊ぜんは太公望の耳元に出来るだけ近づいて囁いた。
「師叔、朝ですよ。起きてください」
「ん……んう……」
太公望が楊ぜんの声に反応する。
「おはようございます。起きてください」
「あ……え?」
うっすらと太公望の目が開く。まだ寝ぼけているようだ。
「あ……朝か……、もう少しだけ、頼む……公主……」
楊ぜんは固まった。
「お――――プリンちゃんっ」
「ふーん、確かにキレイさ」
会議室から武王と天化が城外を歩く女性の品定めをしている。
「だろう、あれほどのプリンちゃんはめったに居ねえぜ、ほら、太公望も見てみなって」
「ん―――? どれどれ?」
太公望もその女性を見る。
「……そんなに美人か?」
「なーに言ってんだよっ、俺の知る限りでは5本の指に入るな」
「うーむ……?」
太公望は納得いかないようすだ。
「じゃあ、どんな人なら美人さ」
「竜吉公主だ」
天化の問いに即効答える。
「……言いきったさね」
「むう……というか何かこう言わねばならんような気がする……」
「? 何言ってるさ」
「まあ、確かに美人なんだろ? 妲己と同じくらい」
「公主の方が美人だ」
再び太公望は即答する。
「……どうしたさ? スース」
「……わからん? なにやら反射的に……」
「変なヤツ―――――」
そんな太公望を楊ぜんだけが引きつった顔で見ていた。
「……私の影に天才も形無しだのう……」
崑崙から下界を眺めながら、竜吉公主が呟く。
「どうかなさいました?」
「いや、やはり好みの男は小さいうちから仕込んでおかねばのうと思ってな」
竜吉は碧雲、赤雲相手に語りだす。
「きゃー、逆光源氏ですね!」
「やだあ、ステキー」
「様々な教育も必要であるが、最も重要なことは、自分を絶対視させることだな。
絶対無二の存在と教え込むのだ」
そして作品ナンバー1の太公望ができ上がった。
最初で最後の最高傑作であると竜吉は自負している。
「刷り込みというやつじゃな、そうすれば他の女など見向きもせぬ。というか出来ぬ」
まあ、同性相手までの対策は考えていなかったのが多少悔やまれるが。
しかし太公望へ刻み込んだ自分の記憶に翻弄されるのがオチであろう、と竜吉は考える。
「封神計画が終わるまでは貸しといてやろう」
「? なにがです? 公主さま」
「いや、独り言だ」
くすくすと竜吉が笑う。
そして再び下界に目を向けながら、碧雲、赤雲と団欒を始める。
下界では太公望を中心に今日も面白いことが起こるだろう。それが退屈な竜吉を楽しませてくれる。
崑崙の最強仙女は今日も見事に健在だ。
終
゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜
砂糖大根さんのあとがき
サイトも人脈もないオンナの、浮幽霊のようなブツを受けとってくれてアリガトウ……
とっても、竜太なんで、その点だけはこのサイトに似合う……かあ?
まあ、いいや。
とりあえず、受けとってくれてアリガトウ。
結構見なおすのん恥ずかしいもんやね(笑)
ついでに、もう一個もおくっちゃえ―――――(アホ)
゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜ ゜
草子の感謝の言葉
あああああ・・・太公望、アホっぽくて良いなあ・・・
こういう師叔、モロ好み。大好き。
もう死ぬほど愛してる。
はあ・・・公主様、ステキだあ。
女三人、仲良く男共を見て笑って楽しむって図が、またいいのよ!!
うん。愛溢れる竜太だね。
こういう公主サマで裏を埋め尽くしたいものだわ(本気)
私の理想の、太公望と竜吉サマと楊ゼン。これが理想。
これは、みや様のページにあったものを、私が砂糖さんに頼んで再録させてもらったものです。
へにょへにょのサイトに、こんな良いモノをありがとう!
ホームページ作って良かったって、ちょっと思った。