今(2000年8月末現在)、1983年以来17年ぶりに、三宅島が活動しています。
火山学者たちは、今回の三宅島の活動を固唾を飲んで見守っています。第一の理由は、今回の活動が、今までのような山腹からのストロンボリ式噴火・溶岩流流下というスタイルとは全く違うからです。
第二の理由は、日本の火山観測史上初めて、陥没カルデラの形成の場面に火山学者たちが居合わせているからです。類似の事態はロシア・カムチャツカ半島のトルバチク火山やガラパゴス諸島のサンフェルナンディナ島で起きていますが、いずれもある程度の規模の噴火を踏まえてのものでした。直径1500m以上のカルデラ陥没の引き金としては、7月9日の噴火はあまりにも微弱だったのです。
火山学者たちが口を揃えて「前代未聞」「今後の進展は予測できない」と言う今回の事態に際して、行政の対応はどうだったか。
三宅島-神津島2000年ページ での早川由紀夫・群馬大学助教授の数々の御指摘のうち、8月29日早朝の三宅島測候所職員と早川助教授とのやりとりを同ページから転載しますと・・・
「(三宅島)測候所です」 「群馬大学の早川です.名前を教えてください」
「いえません」
「では,肩書きを教えてください」
「いえません」
「わかりました.この事実を公表します」
「神着みもいで石が降った」
「神着では降っていません」
「神着はひろい.測候所では降ってなくてもほかでふっていることがありうるではないか」
「かくにんがとれない」
「かくにんがとれなければ,ふってないというのか」
「ふったことにはならない.ふったかもしれないがふってないかもしれない.だから,(そういうときは)ふっていない(ことになる).測候所でかくにんしてはじめてふったことになる」
「測候所で降ってないことは事実でしょう.しかし三宅島でどこにもふってないかどうかはそれだけではわからない.いまNHKは三宅島で噴石がふったという情報はないと言っている.これについてどう思うか」
「確認できなければ,降ったとは言えない」
「上司はそばにいませんか」
(30秒ほどして別の人が出た)
「所長は別の電話にでている」
「いまのかたと同じ意見ですか」
「はい」
「後悔しませんか.訴えられるでしょうよ」
「行政訴訟でもなんでも起こしてください.質問は何ですか」
「わたしが測候所に聞きたいことは何もない」
「そうですか.こちらからは質問ありません」ガチャン
※読みやすくするため一部文字を着色・拡大しました。
島民の生命と財産が危機に曝されている今、火山観測の最前線の拠点たるべき測候所がこのような禍々しい官僚主義に毒されている事実に、私は怒りを禁じ得ません。