無題 〜七夕によせて〜

Napraforgo

灯りが消えない午後9時のビル街

星が空にあることを忘れたように

背を丸めて道ゆく人 人 人

 

俺もまたその一人

溜息と頭痛だらけの仕事のせいで

随分長いこと猫背のまま

 

飲み屋の店先の笹の小枝に

今日は七夕だとふと思い出し

久しぶりに夜空を見上げる

 

徹夜残業の手元を照らす無粋なビルの灯が

織姫と彦星を隔てる天の川を

周囲のうるさい星ごと消し去り

 

ビルの頂上に挟まれた

墨汁の川のような空には

ほら 二人しかいない

 

あなたに声をかけても無駄だ と

最初から諦めてしまった自分に

俺は無性に腹が立っていた

 


初出;  知人への私信


解説;

 都会の空はネオンやら何やらで明るく、星を眺めるのには全く向いていません。しかし、逆手に取れば、明るい星である織姫と彦星が2人きりになるのには、却って好都合かもしれない・・・と、屁理屈をこねてみたわけです。

 誤解がないように附言しますが、知人を口説くために書いた詩ではありません。

(29/12/2001) 


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