愛するということについてのノート  #6

Napraforgo

 

どんちゃん騒ぎが終わる

タクシー係の俺は

また三次会では茶しか飲めなかった

(金は半額で済んだが)

泥酔したお前を

中古の軽自動車の後部座席に投げ込むのも

すっかり慣れちまった

 

「もう一人くらいなら乗れるけど」

俺は残った連中を見回すのだが

 

「F、お前、終バス出ちまったろ?」

「いや、いいよ。方向が少し違うし

 タクシーで何とか帰れるし さ」

愛想笑いしながら手を振る視線が

釈然としない俺の顔と

中古の軽自動車との間で

子供が持ち歩いている風船のように

ふわふわと揺れていた

 

飲み足りない連中が街並みに融けていく

何人かが地下鉄のホームに吸い込まれる

俺は車に戻り

お前の呑気な寝息をBGMに

家路を急ぐ

 

こっちが何も意識してねえうちに

気を効かせたような真似をされちまったんじゃ

却って下心が萎縮しちまうじゃねえか

身勝手な愚痴をこぼしながら

お前がシートから転げ落ちない程度に

乱暴にハンドルを切る俺

 


初出;  Angel Talk


解説;

 うひゃあ甘口。トロットロに甘いぜぇ(爆)

 ちなみにこれ、投稿元で一番評判が良かった作品です。

(10/10/1999) 


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