雪、雪、雪・・・




北海道で暮らしていると
「ホワイトクリスマス」を喜ぶ感覚が
なかなか理解できません。
私の故郷がある地域は、北海道有数の豪雪地帯です。
新潟や秋田ほどではありませんが、
一晩で30cmも雪が積もったりすることが
年に5回や6回は必ずありました。
余程の暖冬でもないかぎり、
クリスマスの頃には幾らかなりとも積雪があります。

クリスマスや大晦日のような特別な日でもなければ、
降る雪を見て「ロマンチックだなぁ」なんて口走ろうものなら
「寝言言うんでない」と一蹴されます。

積もった雪は自分の重みで少しつぶれたり、
天気の良い日には少し融けたり、で、
降った直後より量が減っていきます。
それでも、全く除雪していない田畑のど真ん中あたりだと、
1mくらいの厚みになります。
玄関が雪で閉ざされないよう、
雪が降った翌朝には、出かける前に雪かきです。
自動車が雪を踏み固めていく車道でも、
‘路面(実際は踏み固められた雪面)’をならすために
ときどき除雪車が出動します。
歩道は小型の除雪車が通って除雪します。

歩道と車道、両方で除雪すると、
雪は歩道と車道の間に積み重なります。
近所の家の玄関先の雪かきも、
出た雪は歩道と車道の間に捨てます。
------その結果、冬の住宅街では
歩道と車道の間に雪の山ができるのです。
高さは大人の背丈以上あります。
交差点や家の車庫の出入口の前では
雪の山は途切れていますが、
それ以外の場所では分厚い壁、
いや、本当に小山のようになっています。
「雪の山に登って遊ばないように」
「冬は見通しが悪いから、飛び出しに注意しなさい」、
学校の先生によく言われたものです。
反面、雪の山は、
自家用車が突っ込んだくらいではビクともしない
期間限定のガードレールでもあるのです。

冬の歩道の路面は、踏み固まった雪で底上げされ、
車道よりも高くなっています。
ただ、マンホールの真上は、
蓋の空気穴から漏れ出る空気で雪が融け、
ある日突然陥没することがあります。
先程述べた‘雪の山’の中に
低学年の子供なら1人くらい隠れられるほどの
大きな空洞ができていることもあります。
勿論、こんなところに隠れて遊ぶのは危険です。
いつ崩れて潰れるかわかりませんから。


3月後半になると、雪がかなり融け、
道は再凍結した氷で滑りやすくなります。
下水溝が雪や氷で閉ざされている場所では、
交差点付近の路肩は朝はスケートリンク状態、
下校する頃には水溜まりになっています。
水溜まりの氷を踏み破って遊んでいて、
うっかり深い水溜まりの氷を踏み抜いて
長靴の中をぐしょ濡れにしてしまい、
ベソをかきながら学校へ行ったこともあります。

かつては、この季節は粉塵の季節でもありました。
スパイクタイヤに削られたアスファルトの粉塵と
雪にしみ付いた排気ガスの煤とが、
真っ黒な泥や埃になって路肩にたまり、
街はどこもかしこもすすけて見えます。
粉塵は服に付くとなかなかとれず、
もっと悪いことに重金属を含んで人体に有害なのです。

粉塵封じのためにスパイクタイヤが
スタッドレスタイヤに置き換えられた今、
故郷の春の街角は少しは垢抜けたでしょうか。
年度始めの忙しい時期になど帰省できない私には、
確かめる術がありません。



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