北海道の雨(上) 〜雨の音〜




そうそう、書き忘れていたことがあった。
北海道と京都では、雨の音が違うのです。
「北海道だろうと京都だろうと、雨は雨じゃないか」
と思われるかも知れません。それは否定しません。
でも、雨の音は確実に違います。


北海道の民家の屋根は、多くがペンキを塗ったトタン板です。
家がつぶれたり、玄関や戸が開かなくなったり、と、
屋根に積もった雪の重みは馬鹿にできません。
トタン屋根だと、ツララの根元が軒に凍り付かない限り、
雪は軒下に滑り落ちてくれます。
もちろん、冬には家の軒下には近付きませんし、
そんな場所で遊んでると怒られたものでした。

で、そのトタンの屋根を雨粒が叩くと、
テレビの‘砂嵐’を荒くしたような音がします。
周囲の家も大半がトタン屋根なので、
町中に雨粒が屋根を叩く音が響くのです。
霧雨でもない限り、
頭から布団をかぶって寝ていても
雨が降っているのがわかるのです。
窓の外を見なくても、
今日は長靴や傘が要るか要らないかが
すぐにわかったものです。

京都に移り住んで最初に違和感を感じたのは、
北海道で聞きなれた‘雨の音’がしないことでした。
瓦屋根でも、かなりの豪雨になれば、
瓦の上を流れてゆく雨水を雨粒が叩いて音を立てるので、
全く音がしない訳ではないのですが、
北海道だったら雨の降り始めは
周囲から「パタ・・・パタ・・・」という音が聞こえてきたのに、
京都では殆どそれが聞こえてこないのです。

雨が降ると地面はぬかるみ、
花によっては咲くのを止めてしまいます。
それでも、私は割と雨の日が好きです。
ただ、雨の日に物思いにふけるには、
他の音をかき消してくれる‘北海道の雨音’のほうが
私には嬉しいのです。



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