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センチメンタルグラフィティ・その2

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(前半戦、突入)

4月2日

ちょうどよいバイトがあったので、今日はそれをやってみることにする。結構いい収入じゃないか。僕の東京の皿洗いのバイトはすごい安い時給なのに。

4月4日

お金の配分を考えてバスで帰ったら24時間以上かかってしまった。さすがに疲れた。家に戻ってゆっくり休もう。

家に帰ると、留守電が入っていた。再生してみると、真奈美からだった。「ここのところ、お話出来なくて寂しい‥‥」そうだ。ごめんね、真奈美。でも一週間もたっていないじゃないか。もうすこし我慢して、頼むから。

4月5日

もう春休みも残り少ない。学校が始まったらそうそう長旅には出られないから。今のうちに何人か女の子に会っておこうか。女の子には絶対見られてはならないトップシークレット事項満載の手帳を開く。スケジュール(過去の記録)と「せつなさマップ」を掲載している。

電話をかけてくれた真奈美はハートが紫(注:5段階は青<紺<紫<赤<橙と表示)になっているな。でも今から高松はちょっと厳しい。横浜はいつでもいけるし、名古屋あたりでお茶を濁すか。

うまくるりかと話すことが出来て、明日会うことになった。ということは今日の夜にはまた出発しなくては。「MLながら」に乗ろう。

4月6日

名古屋駅地下街でるりかと待ち合わせだ。とりあえず朝飯にきしめんでも食べようと思ったら、もうるりかが待っているではないか。確か待ち合わせは11時だったはず。驚いたな。

「ちょっと早く来すぎちゃって‥‥」

「あ、ありがとう‥‥」

思わず真奈美口調になってしまう僕であった。

4月7日

新学期の始まりだ。僕のスケジュール表には全国の女の子とのデートの予定しか入っていない。高校3年生というのに‥‥。たぶん僕の学校は大学の付属校なんだろう。全国行脚の資金を確保するために日額5,000円の皿洗いに励まなくてはならない。

4月11日

あわただしい一週間もこれで終わりだ。うちの学校は週休二日らしく、全国を飛び回らなくてはならない僕にとっては大いに助かる。

皿洗いのバイトから戻ると、留守電にメッセージが入っていた。若菜からだ。

「ここのところお会いできなくて、若菜は寂しいです‥‥」

うーん、つらそうだ。今度は京都に行くかな? でも電話してからじゃないといけないし、今日はもう遅いな。明日かけよう。

4月12日

朝一番に若菜に電話をしてみた。しかし、夜12時にかけるのと、朝6時にかけるのはどっちが迷惑だろう?

「あ、お電話くださったんですね。嬉しいです」

電話口の若菜は更に丁寧な言葉遣いだ。早速、今度京都に行こうと思っていることを告げると、「26日はどうですか?」とのこと。この日程でOKした。

受話器を置いてしばらく考える。せっかく京都に行くんだから、それだけじゃ勿体ないな、近くにも寄ってみようじゃないか?

そう思った僕は夏穂に電話していた。運良く27日に約束できた。

4月19日

特に今日は予定がないので、ゴールデンウィークの計画でも立てることにする。26、27日は既に決まっているが、三連休はどうしようか? まず29日は一日しかないので、近場の明日香に会うことにして、連休は北にしてみよう。北には3人、休みも3日。ちょうどよいだろう。

早速電話をしてみる。ほとんど綱渡り的な日程だが、時間を進めたり戻したりしながら、なんとかうまく予定を組むことが出来た。

29日、明日香。3日がえみる、4日に妙子、5日にほのかだ。この手帳を彼女らに見られたら僕の命はないだろうな。

4月25日

時間とお金の節約が至上課題の僕は、バイトで疲れた体を引きずって快速夜行列車に乗った。朝になれば京都に着く。

4月26日

待ち合わせの時刻通りに祇園に着くと、若菜は既に待っていた。どこに行くかはとりたてて決めていなかったので、適当に町中を歩いていた。途中の本屋に立ち寄ったとき、若菜が冒険小説の世界にあこがれているのを思い出した。

でも、適当に歩いたわりには、時間通りに迎えの車の来る場所にたどり着いたな。やるな、若菜。

4月27日

今日は大阪で夏穂と会う。前日はまともにユースで休むことが出来たので、体調もばっちり。そんな僕の調子を見透かすように、夏穂は僕をテニスコートに引きずっていった。

夏穂のペースで運動しているとさすがに疲れるが、でもたしかに心も軽くなったような気がした。

4月28日

今日は学校に行きたくなかった。もし今日が休みだったら、大阪から更に二人くらいに会いに行けたのに。

4月29日

今日は横浜で明日香とデート。自分のことを「明日香」と言ったり「明日香ちゃん」と言ったり、なかなか統一性がないが、それは黙っておこう。なぜかまた本屋に立ち寄ることになった。情報通の明日香らしく、雑誌をさかんにチェックしていた。むかしからそうだったっけ?

5月3日

野草園でえみると待ち合わせ。仙台は比較的近いので、昨日の夜行快速は6時には着いた。直接向かって、既にえみるが待っていると怖いので、少し駅前で時間をつぶした。でも1時間前にいたのはさすがだと思った。しかし、この格好にこの髪型を見ていると、どうしても小学生にしか見えない。そういえば小学校のころ、校門で待っていてくれたえみるを思い出したが、なんか今の目の前のえみると全然変わらない気がする。

5月4日

青森では横浜のパチモノみたいな橋で待ち合わせだった。ラフな格好で来た妙子もなかなか可愛らしい。ぶらぶらと歩いていると、公園にさしかかった。そういえば昔はよく妙子とままごと遊びをしたっけ‥‥。なんか会うごとに昔を思い出すのはなんかの策略なんだろうか?

妙子が夕飯をごちそうしてくれるというので、お言葉に甘える。おかずもみそ汁も本当に美味しい。東北は米もまた美味しい。すっかり満足した僕を妙子が見送ってくれた。「気をつけて帰ってね」。でも、青森の駅から僕が乗るのは上り列車ではない。

5月5日

急行「はまなす」で札幌に着く。夜行3連泊はやはりつらい。でもやっぱり北海道は遠いのであった。「せっかくだから北海道らしいところに行きたい」という僕のリクエストにほのかは即時に答えてくれた。そして行ったのが牧場。馬好きのほのからしい。でもほのかは馬にひどい目に遭わされたことがあったのではなかったっけ?

いくら北海道でも札幌の中心地から牧場までは結構な距離があったはず。でもなぜか一瞬で着いてしまった感じだ。なんかの魔術か?

夕方にはほのかは帰ったので、最終の飛行機で何とか家に戻れた。もし間に合わなかったら、翌日遅刻は必至だろう。

5月9日

金曜日の晩、いつものようにバイトから帰ってきたら留守電が入っていた。最近はどうも女の子からのクレームばかりで心が痛む。再生してみると、ほのかからだった。

「やっぱり北海道は遠いのかな‥‥。だって最近会いに来てくれないんだもん」

あわてて手帳をめくる。5日に会ったのはほのかだよな、間違いないはずだ。 

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