免疫抑制剤比較



 国内外で実施された膵島移植において
エドモントン・プロトコール
で用いられた免疫抑制剤
1.抗 CD-25 モノクローナル抗体(シムレクト)
2.シロリムス(ラパマイシン)
3.タクロリムス(プログラフ)

一方
日本膵・膵島移植研究会事務局が申請した
 インスリン依存状態糖尿病の
治療としての
心停止ドナー膵島移植
の本研究では、以下の免疫抑制剤が申請されている。
1.抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(サイモグロブリン)
2.バシリキシマブ(シムレクト)
3.エタネルセプト(エンブレル)
4.タクロリムス(プログラフ)
5.サイクロスポリン(ネオーラル)
6.タクロリムス水和物徐放性カプセル(グラセプター)
7.ミコフェノール酸モフェチル(セルセプト)

高度医療評価会議 構成員名簿
高度医療 評価表(番号 018 )
【倫理的観点からの評価】評価者: 田島
4.同意に係る手続き、同意文書 不適
5.補償内容
コメント欄:(「不適」とした場合には必ず記載ください。)
○ 臨床試験に参加することによって得られる利益の内容の記述が抽象的で不明確なので、既実施の18症例の結果について、より具体的に説明すべきである。
○ 副作用の説明が甘く実態を正確に表していないので、厳しい内容についても正しく記述する必要がある。
○ 費用についての説明が分かりにくく、費用負担内訳表の中で、被保険者負担の一部負担金の部分のみ色付けすると、その額のみが患者負担であるとの誤解も与えかねないので、少なくとも本文中に臨床試験期間中の患者負担額が最大で14,105,645円(福島県立医科大学の場合)となり、その後も移植の効果を持続させるには免疫抑制剤等の患者費用負担が続くことを明記すべきである。
○ 臨床試験により起こり得る利害の衝突及び研究者等の関連組織との関わりについての記述が無い。
○ 担当医師の問い合わせ連絡先の記載が不十分で連絡が付くかどうか疑問視される上、患者相談等の対応が整備されていない。
意見書(技術委員 谷川原祐介、2009 年11 月30 日)
高度医療(番号 018)インスリン依存状態糖尿病の治療としての心停止ドナー膵島移植 より抜粋
医療技術の有用性等:膵島移植は1 型糖尿病患者に対する有用性が高く推進を期待する医療技術である。
移植した膵島の機能維持のために適切な免疫抑制療法が必須となるが、免疫抑制薬の組合せと用法・用量の設定については臨床的エビデンスに基づくべきである。
これまで国内外で実施された膵島移植においてエドモントン・プロトコール(抗CD-25 モノクローナル抗体、シロリムス、タクロリムス)に基づく免疫抑制療法は最も実績があり、相応の成績が得られている。
申請者が示した引用文献のうち主要な論文(Ryan et al. Diabetes 2005, Shapiro et al. New Engl J Med 2006, Okitsu et al. TransplantProc 2005, Saito et al. Transplant Proc 2005, Noguchi et al. Am J Transplant 2006)はエドモントン・プロトコールを用いたものである。
しかしながら本研究では、サイモグロブリン、バシリキシマブ、エタネルセプト、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、タクロリムスまたはシクロスポリンという独自の免疫抑制療法を計画しているが、それら薬剤の選択、組合せ、至適用量に関する設定根拠が示されていない。
すでに国内外で相応の実績のあるエドモントン・プロトコールであれば、高度医療としての実施は適と判断する。
しかしながら、未だ臨床評価結果が出ていない新しい投薬法は有効性と安全性が未知であることから、保険併用の高度医療ではなく、まずは純然たる臨床研究として実施することが望ましい。
申請様式第3号高度医療の実施計画には、「医薬品は直接製造会社より購入する」とあるが、患者への説明文書には「免疫抑制薬の費用は原則として本臨床試験実施期間中(初回膵島移植から2 年3 ヶ月間)は製薬会社負担で行います」とある。どちらが正しいのか? 後者の場合、高度医療負担金に薬剤費は含まれていないのか。
エドモントン・プロトコールで用いられた シロリムス(別名:ラパマイシン) は、当研究の申請には使われておりません。
【実施体制の評価】
評価者:松山 晃文(まつやま あきふみ)
(財)先端医療振興財団 先端医療センター研究所 膵島肝臓再生研究グループ グループリーダー
 医療技術の有用性等;を「適」 より・・・(前略)本申請においてもエドモントンプロトコールよりも長期予後を改善させうる免疫抑制剤プロトコールの使用を試みている。(後略)・・・
(本間注:この長期予後を改善させうるとするデータはどこにも存在しません。このような評価をする
根拠はどこにもありません!・・・谷川原技術委員が指摘の:患者への説明文書には「免疫抑制薬の費用は原則として本臨床試験実施期間中(初回膵島移植から2 年3 ヶ月間)は製薬会社負担で行います」とある・・・。から考えれば、薬メーカーから様々な賄賂や利権の介在が存在しているのか?)
意見書(技術委員 谷川原祐介、2010 年1 月29 日)
医療技術の有用性・・・ 不適

1.抗CD-25 モノクローナル抗体

モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は特定の抗原に対して作用する。それゆえ副作用はより少ない。特に顕著なものとして、IL-2受容体(CD25)やCD3に対する抗体がある。これらは移植した臓器が拒絶されるのを防ぐために用いられるが、リンパ球の集団構成の変化を追跡するのにも用いられる。将来同様の新薬が期待できる。抗CD25モノクローナル抗体は腎移植の急性拒絶の予防で用いられ、抗CD52モノクローナル抗体はB細胞性の慢性リンパ性白血病の治療薬である。
T細胞受容体に対する抗体
OKT3 (R) は現在認可されている唯一の抗CD3抗体である。マウスIgG2aタイプの抗CD3モノクローナル抗体で、全ての分化T細胞にあるT細胞受容体複合体に結合してT細胞の活性化と増殖を抑える。最も効果のある免疫抑制物質のひとつであり、臨床ではステロイドやポリクローナル抗体に耐性の急性拒絶症状を抑えるのに用いられる。ポリクローナル抗体よりも特異的に作用するため、移植において予防的に用いることもある。
OKT3の作用機構はまだ十分には理解されていない。この分子はT細胞受容体複合体のTCR/CD3に結合することがわかっている。最初のうちはこの結合によりT細胞が非特異的に活性化され、30分から60分後に深刻な症状を呈する。その特徴は発熱、筋肉痛、頭痛、関節痛である。心臓血管系や中枢神経系に生命を脅かすほどの反応を起こし長期療養が必要になる例もあった。OKT3はTCR-抗原間の結合を阻み、T細胞表面のTCR/CD3を構造変化させたり完全に除去したりする。これによりおそらく網内系細胞による取り込みが活性化し、T細胞数が減少する。CD3分子へのクロスバインディングは細胞内シグナルをも活性化し、副刺激分子による他のシグナルを受けなければ、T細胞のアネルギーやアポトーシスを誘導する。またCD3抗体は細胞のバランスをTh1からTh2へ以降させる。
したがってOKT3を用いるかどうかを決めるには、大きな効果だけでなく毒性副作用についても考慮する必要がある。そこには過剰な免疫抑制のリスクと、患者が薬剤を中和して効かなくする抗体を産生するリスクがある。CD3抗体はポリクローナル抗体より特異的に作用するとはいえ、細胞性免疫を著しく低下させ、患者が日和見感染や悪性腫瘍にかかりやすくしてしまう。
IL-2受容体に対する抗体
IL-2は免疫系を調節する重要な因子であり、活性化したTリンパ球のクローン性増殖や維持に必要である。その効果はα、β、γ鎖からなる三量体細胞表面受容体IL-2aによって仲介される。IL-2a(CD25、T細胞活性化抗原、Tac)はすでに活性化されたTリンパ球のみが発現する。それゆえ、選択的な免疫抑制処置にとって特別な重要性があり、効果的で安全な抗IL-2抗体の開発に焦点を当てて研究が行われてきた。遺伝子組み換え技術を利用してマウスの抗Tac抗体が改変され、1998年にbasiliximab (Simulect (R)) とdaclizumab (Zenapax (R)) という2種のマウス-ヒト・キメラ抗Tac抗体ができた。これらはIL-2a受容体のα鎖に結合し、IL-2に誘導される活性化リンパ球のクローン性増殖を抑え、その生存期間を短縮する。両側腎臓移植後の急性臓器拒絶の予防に用いられ、どちらも同様に効果があり、副作用はわずかである。

2.シロリムス
参照サイト:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社のステントに用いられています:医師向けコンテンツより

ラパマイシンは、1970年代にイースター島の土壌でStreptomyces hygroscopicsという放線菌の一種から産生された化合物として発見された。同島のポリネシア語名の「ラパ・ヌイ」のラパと、「菌類から生じた抗生物質」を意味する接尾語のマイシンとを組み合わせてラパマイシンと名付けられた。

ラパマイシンが、免疫抑制作用においてカルシニューリン阻害剤より優れている点は、腎臓に対しての毒性が低いということである。カルシニューリン阻害剤により長期的に免疫を抑制された患者は、腎機能が低下し、時には慢性腎不全を発症する場合もあるが、ラパマイシンではその心配が少ない。
また、臓器提供者が溶血性尿毒症症候群に罹患している際には、カルシニューリン阻害剤を使用することによって移植後に再発する危険性もある。しかし、ラパマイシンは2008年10月7日に米国食品医薬局より、腎機能低下のリスクを警告するラベルを訂正する許可が出されている。

ラパマイシンの抗増殖効果には、がんに対する治療効果がある可能性がある。最近では、腎移植を行う予定の患者にラパマイシンを投与したところ、カポジ肉腫の進行が抑制されたことが確認されている。また、ドキソルビシンとラパマイシンとを併用したマウスに対する治療では、AKT陽性の悪性リンパ腫が不活性化されたことが示されている。
パノビノスタットはメイヨー・クリニックによる研究で、ラパマイシンと共に使用することで、相乗効果的に膵癌細胞を不活性化させる事が判明している。研究では、この組み合わせにより、培養された膵癌細胞の内、最大で65%が不活性化されると判明した。
(以上ウィキペディア)

シロリムス(Rapamune、別名 ラパマイシン)は放線菌Streptomyces hygroscopicusが生産するマクロライドラクトンである。これは拒絶反応を予防するのに用いられる。タクロリムスの構造類似体ではあるが、やや異なる作用機序、異なる副作用を持つ。
Tリンパ球活性化の最初期に影響するシクロスポリンやタクロリムスとは異なり、シロリムスは第二期、つまりシグナル伝達とクローン性増殖に影響する。タクロリムスと同じ受容体(イムノフィリン)に結合するが、そうしてできる複合体はカルシニューリンではない他のタンパク質(TOR; target of rapamycin)を阻害する。したがってシロリムスはシクロスポリンと相乗的に作用し、他の免疫抑制剤と組み合わせることで副作用も少なくなる。Tリンパ球のキナーゼやフォスファターゼを間接的に阻害するため、活性化のためのシグナル伝達と、細胞周期のG1期からS期への移行が阻害される。同様にB細胞がプラズマ細胞に分化するのを妨げ、産生されるIgM、IgG、IgAの量を低下させる。
重要なことは、腎毒性が見られないということである。副作用としては高脂血症、骨髄抑制が見られる。シロリムス溶出ステント(Drug Eluting Stent; DES)が冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)に用いられることがある。これは平滑筋の増殖を抑制し、ステントの再狭窄を防止するものである。
シロリムス誘導体テムシロリムスエベロリムス

3.タクロリムス

タクロリムス(プログラフ, グラセプターPrograf, 開発コードネーム: FK506)は細菌Streptomyces tsukubaensisの生産物である。マクロライドラクトンであり、カルシニューリンを阻害する。
シクロスポリンよりもさらに強力な免疫抑制薬であり、シクロスポリンと同じような機序によって免疫を抑制する。FK結合蛋白依存性にIL-2の転写因子であるNFATを活性化させるカルシニューリンとカルモジュリン、カルシウムイオンの相互作用を阻害する。シクロスポリン同様に腎毒性がある。移植のための免疫抑制の他、アトピー性皮膚炎の局所外用薬としても用いられる。これは顔面には強力なステロイドが使えないため、用いるもので、外用薬自体の全身での免疫抑制効果は低いといわれている。
この薬剤は、心臓、肺、心肺同時移植に用いる病院もあるが、特に肝臓や腎臓の移植に用いられる。


に基づく免疫抑制療法は最も実績がある。

1.サイモグロブリン

免疫抑制剤
①ジェンザイム・ジャパン株式会社製一般名:抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン、製品名:サイモグロブリン

一般名:抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン静注用
効能・効果:中等症以上の再生不良性貧血、造血幹細胞移植の前治療、造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病
薬効:6399、病原生物に対する医薬品、生物学的製剤、その他の生物学的製剤、他に分類されない生物学的製剤

本剤は、緊急時に十分対応できる医療施設において、再生不良性貧血及び造血幹細胞移植に関する十分な知識・経験を持つ医師のもとで、本剤が適切と判断される症例についてのみ投与すること。また、治療開始に先立ち、患者又はその家族に有効性及び危険性を十分説明し、同意を得てから投与すること。
 

2.バシリキシマブ(エドモントン・プロトコールでも使われた種類の免疫抑制剤)

急性拒絶反応抑制剤
(抗CD25モノクローナル抗体)
③ノバルティスファーマ株式会社製一般名:バシリキシマブ、製品名:シムレクト

遺伝子組換えによるヒト/マウス キメラ型抗CD25モノクローナル抗体(IgG1)で、1,316個のアミノ酸残基からなる糖タンパク質である。
【薬効薬理】
バシリキシマブは、ヒトIL-2受容体α鎖に対するマウスモノクローナル抗体であるRFT-5を基に、ヒトにおける異種抗原に対する免疫原性を減弱させ、バシリキシマブの効力であるIL-2の受容体結合阻害作用時間の延長を目的として開発されたヒト/マウス キメラ型モノクローナル抗体である。
(1) IL-2受容体に対する作用
バシリキシマブは、ヒト、アカゲザル及びカニクイザル由来の活性化T細胞において、細胞表面に選択的に発現するIL-2受容体α鎖(CD25)に対して特異的な親和性を有し、IL-2のIL-2受容体に対する結合を抑制した(in vitro)。
(2) T細胞に対する作用
バシリキシマブは、ヒト末梢血由来T細胞の活性化及び混合リンパ球反応を抑制した(in vitro)。

免疫抑制剤による治療を受けた腎移植患者では、悪性腫瘍(特に悪性リンパ腫、皮膚癌等)の発生率が高いとする報告がある。

3.エタネルセプト

完全ヒト型可溶性TNFα/LTαレセプター製剤
②ワイス株式会社・武田薬品工業株式会社製一般名:エタネルセプト、製品名エンブレル

エタネルセプトとは、分子標的治療薬のひとつで関節リウマチなどの膠原病・自己免疫疾患の治療薬。日本ではエンブレル®の商品名で武田薬品工業が販売している。
薬理:薬剤そのものは、可溶性TNF受容体とIgGを遺伝子組換えにより結合させたリコンビナント融合蛋白である。TNFα/βの両方に結合し、TNF受容体へのシグナル伝達を阻害し、病勢を沈静化させる。
適応症:日本においては、関節リウマチを適応症としている。同じカテゴリーであるインフリキシマブとは異なり、メソトレキセートとの併用は必ずしも必要とはされない。

5年間の安全性報告において、本剤を投与した783例のうち、悪性リンパ腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、黒色腫等が26例、非黒色腫皮膚癌が15例報告されている。
2005年3月に国内で発売された関節リウマチ薬エンブレル(一般名エタネルセプト)を使った患者のうち、敗血症など副作用の可能性がある死者が16人いることが、製造元のワイス(本社・東京)などの調査でわかった。

4.ミコフェノール酸モフェチル(MMF)

免疫抑制剤
⑦中外製薬株式会社製一般名:ミコフェノール酸モフェチル、製品名:セルセプト

本来、“免疫”は、細菌やウイルス、異物などから体を守るための自然な防衛システムです。けれど一方で、臓器移植においては、拒絶反応の要因となります。
この薬は、高ぶった免疫の働きを抑制する「免疫抑制薬」です。免疫を担当するリンパ球の増殖を強力におさえる作用があります。腎移植など臓器移植後の拒絶反応の予防に用います。
細胞の核酸合成を阻害する「代謝拮抗薬(プリン拮抗薬)」の部類です。免疫を担当するリンパ球の増殖を選択的に抑制するとされます。
効果が高い反面、いろいろな副作用がでやすいです。あわてないよう、事前に医師から十分説明を受けておきましょう。軽い副作用の場合、治療を優先しなければならないことも多いです。
とくに注意が必要なのは、骨髄抑制にともなう血液障害、消化管出血、血栓症、それと感染症です。皮下出血など出血傾向、発熱やのどの痛み、皮膚の発赤や水ぶくれ、下血といった症状に注意してください。予防のためには、頻回な検査が欠かせません。
そのほか、下痢、食欲不振、吐き気、嘔吐などもかなりの頻度でみられます。また、多くはありませんが、脱毛、口内炎、発疹などもみられます。いつもと違う症状に気づいたらすぐ医師に連絡してください。
すぐに起こる副作用ではありませんが、将来的に白血病やリンパ腫、皮膚がんなどの悪性腫瘍の発現リスクが少し高まる可能性があります。このへんのことも含め、治療上の有用性と危険性についてよく相談しておくとよいでしょう。

皮膚癌の危険性を避けるため、帽子等の衣類や日焼け止め効果の高いサンスクリーンの使用により、日光やUV光線の照射を避けること。

5.タクロリムス(エドモントン・プロトコールでも使われた種類の免疫抑制剤)

免疫抑制剤
④アステラス製薬株式会社製一般名:タクロリムス、製品名:プログラフ
免疫抑制剤
⑥アステラス製薬株式会社製一般名:タクロリムス水和物徐放性カプセル、製品名:グラセプター

タクロリムス(プログラフ, グラセプターPrograf, 開発コードネーム: FK506)は細菌Streptomyces tsukubaensisの生産物である。マクロライドラクトンであり、カルシニューリンを阻害する。
シクロスポリンよりもさらに強力な免疫抑制薬であり、シクロスポリンと同じような機序によって免疫を抑制する。FK結合蛋白依存性にIL-2の転写因子であるNFATを活性化させるカルシニューリンとカルモジュリン、カルシウムイオンの相互作用を阻害する。シクロスポリン同様に腎毒性がある。移植のための免疫抑制の他、アトピー性皮膚炎の局所外用薬としても用いられる。これは顔面には強力なステロイドが使えないため、用いるもので、外用薬自体の全身での免疫抑制効果は低いといわれている。
この薬剤は、心臓、肺、心肺同時移植に用いる病院もあるが、特に肝臓や腎臓の移植に用いられる。

免疫抑制剤による治療を受けた患者では、悪性腫瘍(特にリンパ腫、皮膚癌等)の発生率が高いとする報告がある。

または
6.シクロスポリン

免疫抑制剤
(カルシニューリンインヒビター)
⑤ノバルティスファーマ株式会社製一般名:シクロスポリン、製品名:ネオーラル

概要:スイスのサンド社(現ノバルティス)により開発された。 Tリンパ球によるインターロイキン2,4,5,13やインターフェロンγなどのサイトカイン転写を特異的かつ可逆的に抑制し、ひいてはサイトカイン産生と遊離を抑制する。これはカルシニューリンによる細胞内情報伝達阻害による。臓器移植による拒絶反応の抑制や自己免疫疾患の治療に使用される。
副作用として、腎機能障害(腎毒性と呼ばれ、特にクレアチニン値上昇)、高血圧、多毛、シクロスポリン歯肉増殖症などがある。
2008年10月、アトピー性皮膚炎の治療薬にシクロスポリンが承認された。獣医学領域では犬の乾性角結膜炎の治療のため点眼薬としても使用される。腎毒性があり、副作用として神経症状を示すことがある。臓器移植された患者が出産する例もあり、シクロホスファミドやメトトレキサートなどにくらべ、生殖細胞への影響が少ない。
薬理:カルシニューリンを介した細胞内情報伝達を阻害することにより、免疫担当細胞の活動を抑制する。 タクロリムスと類似の薬理作用を持つ。シクロホスファミドのようなアルキル化剤やメトトレキサートのような葉酸代謝拮抗剤のようなDNAへの傷害性は少ないため、催奇形性は軽減されている。
サンディミュンは疎水性であるため、消化液の中では大きな油滴となり、吸収には胆汁酸による乳化が必要であり、食事の内容やタイミング、胆汁酸分泌量による影響から、吸収にはバラツキがあった。ネオーラルはoil in water (O/W) 型マイクロエマルジョンとなるよう界面活性剤などを配合したものであり、吸収が安定するように製剤技術を用いた製品である。

皮膚癌の発現リスクが増大する可能性があるので患者の皮膚の状態に注意すること。

という独自の免疫抑制療法を計画している
それら薬剤の選択、組合せ、至適用量に関する設定根拠が示されていない。