続・糖尿病50話:第4話 急に発症する1型

 糖尿病には大きく分けて、1型糖尿病と2型糖尿病があります。日本人の糖尿病の95%以上は2型糖尿病と言われていますので、1型糖尿病の情報は不足しがちです。

 1型糖尿病は小児を含めた若い人に発症することが多く、急に症状が出てくるのが特徴です。2型糖尿病は健康診断で見つかることが多いのですが、1型糖尿病は発症のスピードが速いので、ふつう健康診断では見つかりません。急にのどが渇いたり、体重が減ったりして見つかることが多い病気です。

 1型糖尿病では、インスリンというホルモンをつくっているすい臓のランゲルハンス島(さらにその中のβ細胞)が破壊され、インスリンがつくられなくなります。身体の中で血糖を下げる働きのあるホルモンはインスリンだけですから、このホルモンができなくなると血糖が上がる、つまり糖尿病になるわけです。

 では、どうしてインスリンをつくるβ細胞が壊れるのでしょうか。それには「自己免疫」という現象が関係しています。「免疫」は外からの病原体などに対抗する人間の防御システムです。しかし、まれにどういうわけか、病原体ではなく、身体の成分の一部を誤って敵として認識し、攻撃するということが起きます。このようにしてβ細胞が攻撃され、破壊されると、1型糖尿病を発症するわけです。2型糖尿病とは違って、生活習慣や肥満などには関係なく発症します。(大阪医科大学第一内科講師、今川彰久)

毎日新聞 2008年4月15日 大阪朝刊

続・糖尿病50話:第5話 怖い劇症1型

 前回、1型糖尿病は健康診断では見つからないほど発症のスピードが速いというお話をしましたが、今回の「劇症1型糖尿病」は、1型の中でも特に急激に発病するタイプです。このような名前で呼ばれるようになったのは8年前ですが、病気自体は以前からありました。あまりにも急激に悪くなるので、約半数の患者さんでは糖尿病と診断される前に血糖が大きく上がり、意識状態が悪くなってから発見されるほどです。

 典型的な場合、発病して4日ぐらいで意識不明の状態になると考えられています。そこまでいかなくても、のどの渇きや尿の頻度が増え、糖尿病特有の症状ではなく、吐き気や腹痛、あるいは非常に「しんどい」といった医師でも糖尿病かどうか迷うような症状が強いことから、診断が遅れがちです。

 多くの場合、風邪のような症状の後で発病することや小児には少なく、ほとんどが成人であることも分かっています。しかし、その原因はまだ分かっていません。

 1型糖尿病の患者さん自身が、自分が劇症1型であるかどうかを知る方法はあるのでしょうか。GAD抗体という一般的な1型糖尿病のマーカー(目印)は、この劇症1型では役に立ちません。そこで、一番の方法は主治医に発病の時のカルテを調べてもらうことです。劇症1型では発病の時のヘモグロビンA1cはあまり上がっておらず、6%ぐらいです。

 次回は劇症1型も含めた1型糖尿病の治療についてお話しします。(大阪医科大学第一内科講師、今川彰久)

毎日新聞 2008年4月22日 大阪朝刊

糖尿病 50話 アーカイブ一覧
糖尿病の 95%は 2型糖尿病
残りの 5%が 一般的な1型糖尿病

劇症1型糖尿病は
小児には少なく、その5%の中の 約2割の 成人で発症した方 に劇症1型糖尿病が多い。