2010.09 |
代謝疾患分野 劇症1型糖尿病のウイルス原因説に関する研究班 |
劇症1型糖尿病 ( げきしょう1がたとうにょうびょう ) |
研究班名簿 一覧へ戻る |
1. 概要 |
劇症1型糖尿病は、インスリンを産生する膵島細胞の急速な破壊により急激に高血糖をきたし、時には致死的であり、たとえ回復してもインスリン産生の枯渇により、血糖コントロール困難となり、社会生活に高度の支障をきたす重大な疾患である。
また、血糖不安定であるため、合併症もきたし易い。 |
2. 疫学 |
劇症1型糖尿病は急性1型糖尿病の約20%と推定されている。
なお、急性1型糖尿病の年間発症率の正確な情報は乏しいが、およそ1.5/10万人とされている。
従って、劇症1型糖尿病は、日本全国では、年間、おおよそ300人前後の発症数、有病者数2万人程度ではないかと推定される。 |
3. 原因 |
ウイルス感染による膵臓炎、あるいはウイルス感染に対する免疫応答、または、その両方がインスリンを産生する膵島β細胞の急激な破壊につながると推測されているが、その詳細は不明である。 |
4. 症状 |
約70%の症例に上気道炎(咽頭痛、発熱など)、消化器症状(上腹部通痛、悪心?嘔吐)などの感染症状があり、急激な血糖上昇のため、口渇、多飲、多尿、全身倦怠感を示す。
重症化すると昏意識障害、さらには昏睡に陥る。 |
5. 合併症 |
高血糖、ケトアシドーシスによる昏睡を来し、治療が遅れれば、致死的である。急性期から回復後も血糖のコントロール困難であり、糖尿病に伴う、さまざまな合併症(網膜症、腎症、神経障害、動脈硬化症)のリスクが高い。 |
6. 治療法 |
急性期にはケトアシドーシスに対して、適切な輸液とインスリン投与が必須である。
全身状態について、呼吸、循環器の救急的管理が必要な場合もある。
急性期から回復後は、インスリン強化療法など、通常の1型糖尿病の治療に準じて、食事療法、運動療法、インスリン治療、自己管理が必要となる。 |
膵移植、膵島移植などの適応もありうるがドナー不足のため、現実的ではないのが実情である。
将来、原因ウイルスが同定されれば、ワクチン開発による予防につながることも期待できる。 |
7. 研究班 |
劇症1型糖尿病のウイルス原因説に関する研究班 |
|
2010.09 |
代謝疾患分野 多施設共同研究:劇症1型糖尿病の診断マーカー同定と診断基準確立に関する研究班 |
劇症1型糖尿病 ( げきしょう1がたとうにょうびょう ) |
研究班名簿 一覧へ戻る |
1. 概要 |
膵臓のβ細胞(インスリン分泌細胞)が急激に破壊された結果、インスリン分泌が枯渇し、その結果、血糖が上昇し、ケトアシドーシスをきたす疾患。
インスリン治療を行うが血糖変動が大きく、合併症が進展しやすい。 |
2. 疫学 |
日本における劇症1型糖尿病患者数は、5000-7000人であると推測される。 |
3. 原因 |
詳細は不明であるが、感受性を有する人にウイルス感染を契機として抗ウイルス免疫が惹起され、膵β細胞が破壊され、発症する。 |
4. 症状 |
血糖上昇による症状(口渇、多飲、多尿)に加え、ケトアシドーシスによる症状(全身倦怠感、意識障害など)をきたす。 |
5. 合併症 |
インスリン治療が開始され初期の症状が改善した後も、血糖が不安定で、低血糖、高血糖(及びそれによるケトーシス)を生じやすく、糖尿病合併症(網膜症、腎症、神経障害)をきたしやすい。 |
6. 治療法 |
インスリン治療。膵移植、膵島移植も有効であるが、現状ではドナーが不足している。 |
7. 研究班 |
多施設共同研究:劇症1型糖尿病の診断マーカー同定と診断基準確立に関する研究班 |
|
|