2003. 1. 5  イチャンコッペ#1   

天     候
晴れ
気     温
気温 1度
一緒に滑った人
ぐれっち さなちゃん みきおさん Yossy
使用ボード
02 O.Sin 4807
今回の山行は・・・
登坂中の斜面で雪崩発生の恐れがあり、
残念ながら途中で行動を中止し、
滑走せずに下山する事になった。

裏山行動の参考になるかもしれないので、
一応状況を・・・
できるだけ詳しく報告しておく事にします。

イチャンコッペ600m付近から見た
支笏湖と風不死岳&樽前山
2つ玉低気圧が停滞し、日本海側は荒れるということで、
太平洋側の徳舜別山の北斜面に狙いを付けて8時30分に大滝村入りするも、
物凄い降雪であえなく断念。ルスツを流そうかとも考えたが・・・
支笏湖近辺の山に期待をつなぐと支笏湖付近は晴天風無し、迷わずイチャンコッペの登山口に向かう。

●10時35分 登山口
本日の入山者無し。気温はプラス1℃
パーティは5人。全員板を背負いスノーシューでハイクアップするスタイル。
夏道登山道をほぼ正確にトレースしながら行動した。

○斜面の雪の状況○
笹が一部出ているが、前前日の大量の降雪によりかなり埋まった模様。
疎林帯や開けた斜面では、少し重めの新雪で脛くらいのラッセル。
樹林帯では木から落ちた雪が固まってクラストしていたり、
日射で解けて凍った感じで表面がモナカ状の雪面が続いていた。
中はズルズルと滑り、締まりの無い実に登りにくい雪質で、
足場を固定するために強く蹴り込んだり、踏み固めたりしながらラッセルを行っていた。

●600m付近
疎林帯を登坂中「ズシン!」という大きい鈍い音にはっとする。
何か落ちたかな?と思い周りを見回すが何も無い。
足元を見ても異常は無いが、確かに足元に大きな振動を感じた。
地表は夏道では濃い笹薮の斜面だったので、歩くと振動を感じる場合があるかも知れないが、
今感じた音と振動は今まで味わった事が無いもっと違うものだった。

イチャンコッペのアンテナのある785mピークからの南斜面を見ると、
オープン斜面にはっきりと表層雪崩の痕跡が残っていた。
前前日の降雪以降のものと考えられるので、昨日あたりに自然発生したものであろう。
ここは滑走予定の斜面だったので予定を変更し、尾根をこのまま上り詰めて
718峰のピークからの開けた疎林帯を滑走することにする。

●700m付近
斜度30度程度の疎林帯を進む。
先ほど感じた音と振動が、何度か繰り返される。
疎林帯から開けた斜面をトラバース。慎重に一人ずつ渡る。
この時点では、私たちは嫌な感じはしていたものの、
正直言ってそれをそこまで深刻に考えてはいなかった。
疎林帯を抜けて開けた斜面に出る。
あと標高差約15メートル程で718m峰ピークという地点で、
ラッセルの先頭者が、一歩蹴り込むと突然大きな音とともに目の前にクラックが走った。
クラックはそれほど大きな割れ目ではなかったが、
約10メートルに渡って幅2〜3センチの亀裂が雪面に約3m間隔で2本水平に入った。
それらは片斜面の最大傾斜に対してほぼ垂直であった。
その亀裂から10メートルくらい後方に疎林があり、そこに避難した。
そこで、開けた斜面の一角をハンドテストで調べてみると、
雪面から深さ2cmにしもざらめの弱層。その上はクラストとざらめ雪。
その下は70cmにわたり上から新雪とこしまり雪としまり雪の層。
70〜80cm下部あたりに非常に結合の悪い弱層があり、ルーペで確認してみると、しもざらめの層であった。
北海道雪崩研究会主催の講習、訓練でも、こんなに典型的にずれるきれいな弱層は見たことが無かった。
その下は10cmくらいで笹がつぶされている空間の多い地表が現れた。

●12:45 登山口
当然、即時に行動中止の判断。
樹林帯を選び、尾根をスノーシューで下山行動。
下山開始直後、後方でさらに大きな鈍い音と振動が発生し、かなり肝を冷やした。
こんなことは今までの山行で味わった事が無かった。

●反省
滑りたい一心で行動していたが、最初の異常な音に気がついた段階でハンドテストを行うな
積雪内部の状況を調査した上で判断・行動するべきだった。

支笏湖方面は3日夜に大荒れの天候で40センチ以上の積雪があったことを知っていた。
また、4日の段階で札幌方面に抜ける道は雪崩の恐れがあるため、道路が封鎖されていた事も知っていた。

暖気が入った嵐の後は雪崩が起こりやすいのは定説。読みや心構えに甘さがあったか?

●参考までに
使用スノーシューはMSR。
自分らは装備を含めて平均体重80キロくらいになると思います。

現場で行ったハンドテストは状況が状況だけに弱層チェックのみ。
実際のところ詳しい検証をする余裕は全くありませんでした(笑)
メジャーなどは無かったので、データはおよその所感でしかありません。
故にルーペを使った正確な雪質のチェックは、雪面から70〜80センチの深さの弱層付近しか行っておりません。
もう一度積雪層の状況を整理して述べておきます。

□積雪面から深さ約2センチ〜
弱層あり。危険度評価は4。掘り出したら崩れた。
この層の上部の雪ははクラスト気味の雪。簡単に剥がれるというか剥けて砕けた。

□積雪面から深さ約70〜80センチ〜
弱層あり。危険度評価は3.5。手首をかけただけで崩れた。ルーペでしもざらめの弱層と確認。
この層の上の雪質は、そのままブロックで取れて崩れず安定していた事から推察すると、
上部はやわらかい新雪、下に行くにしたがって、こしまり、しまりという固い層になっていたのではないか?
弱層の上はしまりの硬い層であった事はルーペで確認しています。
そしてラッセル中ズルズルと滑る登りにくかったので、比較的新雪の層の厚みが大きかったのではないかと考えます。
(前前日の降雪からも推察されます。)

この弱層から5〜10cm下は氷ついた笹が密集して倒れている隙間の多い地表面でした。

○今回のケースの仮説
可能性として考えられるのは、
地表面に倒れている笹と積雪層の間の弱層が原因の乾雪全層雪崩と、
積雪面から深さ70〜80センチのしもざらめによる弱層が原因の乾雪表層雪崩です。
特に山域の特徴から乾雪全層雪崩の発生しやすい状況にあったと考えられます。
現場が疎林帯からあまり離れていない開けた斜面であったのが幸いし、
ブロックが立ち木で支えられるような状況にあったため、雪崩に至らなかったという意見を頂きました。
また、現場で発生した音と振動については、積雪面が内部でずれた音であると考えられます。
この様な音がして行動を続けていくうちに雪崩が発生したという報告もありました。
私たちはこの時期、どうしても表層雪崩にばかり注意が行きがちですが、
ハイシーズンの全層雪崩についてもしっかりとした知識をもっている必要があることを痛感させられました。

支笏湖近辺はそんなに雪が多くない地域ですし、急激に積もったドカ雪の重みがまず原因なのでしょう。
やがて時間が経つにつれて積雪は増し、焼結が進み、安定していくわけで・・・。
つまり、僕らはいずれにせよ積雪が安定する前に山に入ってしまったということ・・・。
もっとしっかり出来上がってから山に入ればそんなこともなかったのでしょう。