4:概要
上層坪沢本洞には我が国最大級の巨大二次生成物群が発達し日本最大の石柱(12m)や日本最大のカーテン銀の緞帳(高さ12m幅10m)が産出する。 中層龍の背本洞は高さ最大50m以上の天井の高い洞穴が1600m以上続く我が国屈指の地底渓谷洞である。 不帰の道は対照的に迷路状洞穴が1330m続き左右で対称的な形で発達している。
・氷渡洞中央本洞
洞口から幅3m〜5m高さ1〜2mの洞穴を東へ100m進むと、長慶の間(長径23m短径7m高さ17m)のホールに出る。 小さな下りの縦穴(立命風洞)を抜け77m進むと洞穴は左右に分岐する。 中央本洞の形成は単一要因ではなくポケットやノッチがところどころに観察されることから飽和水帯と循環水帯において形成されたことを示している。 二次生成物は棚田を連想させる幅0.5mm〜5cm未満のリムストーン、その中に産出するカルサイトの結晶、長慶の間の長さ5mのフローストン(銀のオーロラ)、国内では報告例が少ないボックスワークが洞口から数十m先の天井に発達している。
・氷渡洞不帰の道(右洞)
右洞は分岐点から東へ100m進み右折し南へ約250m伸張する不帰の道と不帰の道から西へ290mの寸狩(ズンガリ)支洞に挟まれた約48,000uの中で迷路状に発達している。 空間は飽和水帯と循環水帯時に節理に沿って形成されたと考えられ、洞穴の平均的高さ幅とも2mと均質的な大きさの洞穴が続く。 二次生成物はフローストン、つらら石、石筍、石柱など一般的な二次生成物が洞の大きさなりに発達している。
・氷渡洞龍の背本洞(左洞)
分岐点からほぼ北東方向に直線的に伸びる洞穴で第4サンプから西に大きく方向を変えている。 洞穴形成は弱線に沿って水が流れ(循環水帯)急激な下方浸食が行われたと考えられる。 龍の背本洞でのポイントはコの字型に右左折を繰り返す 氷渡の氷壁〜きらめく星座間 と 穹窿支洞入口付近〜青き地底湖間 であり特徴的なことを列挙する。
A) 氷渡の氷壁(落盤の山)〜きらめく星座間
a:氷渡の氷壁正面には破砕帯がありきらめく星座方向に直線的に伸びている。
b:幻の滝で右折し洞床が5mアップする。急激な上昇はここだけである。
c:床にはチャートの岩脈が現れ立命館大学探検部が名付けた龍の背を連想させる。
d:夢の宮殿と呼ばれる龍の背本洞で最も二次生成物が発達する小ホールがある。
B) 穹窿支洞入口付近〜青き地底湖間
a:穹窿支洞入口(左岸)付近から天井が低くなり(2m〜3m)様相が変化する。
b:奥から本洞を流れる水流は渇水時賽の河原正面に流れ込み姿を地下に没する。
c:青き地底湖は龍の背本洞最奥部の第1サンプで、水深9.6m,長さ42m,幅5m。
C) 青き地底湖(第1サンプ)〜第6サンプ間 (サンプ=水没部)
a:約200mのドライ区間には無数のつらら石が下がり、水面で満たされた小部屋が。
b:第2サンプ(水深7m,長さ12m)。
c:第2サンプを抜けると、崩落した礫岩が洞幅を埋める「ヘルホール」。
d:第3サンプ(水深7m,長さ33m)。
e:第3の空間は、乳白色に輝く164mの回廊状の空間「フローストンキャニオン」。
f:第4サンプ(水深10m以内,長さ約90m)。
g:浅い流れの中を20m歩くと第5サンプ(長さ約190m)。
d:第5サンプの奥には崩落と縦穴で構成された空間があり、第6サンプが続いている。
・坪沢本洞
洞口から35m降下して着地する。 洞全体が長方形のドーム型で天井や壁面にフローストン、つらら石が密生している。 しかもほとんど全て巨大で日本最大の石柱高さ12m、日本最大のフローストンカーテン「銀の緞帳」高さ17m幅10mなど他の国内の鍾乳洞ではみられない国内最大級の景観を擁している。 夢の入口から奥約60mの洞穴には中空球状鍾乳石、カルサイトの結晶が産出している。
・坪沢本洞北部で発見した新洞
今回発見した新洞の入口は、第2連絡口の北東の最奥に位置する。 ワイヤー梯子で10m降下すると、横穴の床に到達する。 この横穴が、今回発見した新洞である。 新洞の本洞は、北東から東方向にのびていて、奥に向って約30度の上り斜面が約50m、さらに40度の下り斜面を約20mで奥部となる。 ここから戻りの支洞があり、本洞の途中の部分に連絡している。 支洞も含めた総延長は約100mである。